(写真: Greyscale / PIXTA)

 企業が新しいビジネスを興す場合、最初のポイントは、ビジネスアイデアの検討だ。このアイデアがビジネスの成否を決めると言っても過言ではない。しかし、ここで多くの関係者からの声や意見が入ってくるため、その対応に四苦八苦することも多い。

 本連載では、架空の典型的な日本企業である文具・事務用品メーカー「サプライズ社」が、様々な落とし穴でつまずきつつ、担当者が起死回生目指して奮闘していく軌跡を描いていく。3回目の本稿は、ビジネスアイデアの検討プロセスについて起こり得る状況をみていこう。

 「デザイン思考では、人間中心という考え方を核にして、観察から課題定義、アイデア創出、そしてプロトタイプ作成と効果検証までの、筋の通ったプロセスで事業開発を行うことが大事です。このプロセスを常に意識して進めてください」

 新規事業開発手法のワークショップで、ファシリテーターは、何度もそう強調した。

 「筋を通す。新規事業においても、結局は、これに尽きるのか…」

 ワークショップに参加しているサプライズ社のデジタル新規事業企画室、通称「サプライズ・ラボ」のメンバーになった内川博史は、5年前、新卒入社した時から上長だった高木に助けられた時のことを、ふと思い出していた。

社内ルールの不理解が招いたトラブル

 大学で経営学を専攻した内川は、入社後すぐに高木のいる文具事業部営業企画課に配属された。最初の仕事は、サプライズ社の商品を置いている大手小売店の店頭販促の情報収集や効果検証。大学のマーケティングのゼミで学んだことを存分に生かせる業務だった。

 あちこちの店を飛び回ってバリバリと仕事に取り組んでいたある日のこと。同じ部署の先輩が電話を取ってから、内川に声をかけてきた。

 「内川、代理店営業部のマネージャーから、問い合わせが来ているぞ。おまえが、どこかの店で勝手な提案をしているって…これ何のこと?」

 「えーっと…もしかしたら先週、埼玉の店舗まわりをしていた時のことですかね…ちょうどそこの店長さんに陳列の相談を受けたので、私から企画のアドバイスをしたんですが」

 「で、内川、その場で企画のアドバイスまでしちゃったの? その話、代理店営業部にきちんと報告した?」