全3081文字

WTO改革など3点セットの中国対策

 むしろ今回のG20首脳宣言をよく読めば、重要な成果を見て取れる。そしてそれがいずれも日本が議長国となる来年のG20を見据えた布石であることに注目すべきだ。

 まず最も大事なのは、「世界貿易機関(WTO)の改革を支持する」との文言だ。首脳宣言としては初めて合意されたことに意味がある。現在のWTOのあり様に対しては米国も強い不満を持っており、トランプ大統領もWTO脱退をちらつかせている。米国をWTOに繋ぎ止めておくためにもWTO改革は不可欠だ。

 それに対して警戒的なのは中国だ。2001年にWTOに加盟した中国は途上国扱いで優遇されてきた。その甘い扱いに対する反省が米国のWTO批判の背景にある。従って今回の文言を合意しても、「改革」の中身は同床異夢で、これから綱引きが始まる。

 次回会合で進捗をレビューすることも合意されたが、その時、WTO改革が頓挫するようでは、トランプ大統領のWTO脱退論も現実化する恐れもある。まさに今後の国際秩序の方向を決める重要な局面だ。

 第2に、鉄鋼の過剰生産問題での進展だ。

 2年前の杭州でのG20首脳会議からこの問題の仕掛けがスタートした。世界の鉄鋼生産の約半分を生産する中国の過剰生産が問題の根源だ。したがってこの問題はその中国がいかに協力するかにかかっている。

 杭州でのG20首脳会議で設立された鉄鋼グローバルフォーラムという場には中国も参加している。ここで情報共有など進めようとしているが、中国の動きは鈍い。来年6月までに実質的な報告をすることを盛り込んで、徐々に中国が協力せざるを得ない状況を作っている。

 これは鉄鋼問題にとどまらない。中国による過剰生産問題は様々な分野でグローバルな問題を引き起こしている。深刻なのは半導体産業でも起ころうとしている。

 そうした問題の最初のテストケースが鉄鋼なのだ。産業全般の深刻な問題に有効に取り組めるかがこの取り組みの成否にかかっている。

 第3に、質の高いインフラ支援だ。中国の一帯一路に対しては、「借金漬け外交」との批判が高まっている。受け入れ国の財政の健全性、債務の持続可能性をも踏まえた対応に軌道修正させるために、原則を国際的に合意していく戦略だ。この国際的な仕掛けも2年前のG20から始まっている。先般のAPECで新たな原則が合意され、G20首脳宣言にも盛り込まれた。そして来年に進捗させることも記述された。

 このように、WTO改革、過剰生産問題、インフラ支援と中国を巡る問題を一つひとつブロックを積み上げていくように時間をかけて着実に進展させていき、中国を徐々に軌道修正させていく。いわば「ビルディング・ブロック・アプローチ」こそが中国と向き合う戦略だ。

 そういう視点で見ると、今回のG20もそのプロセスの一つとして重要な意味を持つことが理解できよう。そしてその成果が問われるのが、日本が議長国である来年のG20だ。

 前稿でAPECに関して指摘したが、これらの国際会議の一つひとつを切り取って評価しても本質を見失う。時間軸をもって大きな流れをつかむことが重要だ。