「○○さん、この間、同じ薬をいくつかの病院から出してもらったようですが、事情を聞かせていただけますか。出された薬を一緒に飲んでしまうと体への負担もあります」

医療費の適正化に聖域なし
●広島県呉市が取り組む医療費削減策の例
呉市国民健康保険では、レセプトデータを基に、「医療費がかかりすぎるケース」を抽出。本人への連絡など気付きを与えて医療費の削減に取り組んでいる

 このように保健師が患者の家に訪問することで、結果的に医療費の削減につなげている自治体がある。広島県呉市だ。市区町村ごとに運営されている国民健康保険では、地方自治体が保険者として保険料を徴収して、被保険者(地域の住民など)に保険料を給付する。

 呉市は保険者としての意識が極めて高いことで有名だ。診療報酬明細書であるレセプトデータを基に、膨張する医療費を抑える施策に取り組んできたフロントランナーである。

 呉市がまず力を入れたのが、ジェネリック医薬品の積極的な普及だ。がんや精神疾患など重篤な疾患以外について、ジェネリック薬に変えたら本人が支払う金額が200円以上少なくなる場合に、差額を通知するようにした。今でこそ、薬局などでこうした差額を教えてくれるのは珍しくなくなっているが、呉市では2008年度から始めていた。これまでに85%以上の患者が差額通知後にジェネリック薬を使うようになり、10億5000万円以上の削減効果が出ているという。

 次に、冒頭で紹介したように、同じ薬を同じ月内に複数の医療機関で処方してもらっているケースや同じ医療機関に月15回以上通っているケース、同じ病気で3つ以上の医療機関にかかっているケースもリストアップした。患者宅への訪問などを通じて、医療費の適正使用に向けた“気付き”を促している。

 単に薬剤費を減らそうとしているのではない。糖尿病や高血圧などの生活習慣病で治療を続けていたのに、3カ月以上受診していない人には、受診を勧める。また、重症の糖尿病患者には、主治医と本人の了解を得た上で、委託先の看護師が面談や電話による生活指導を行っている。

 地道な努力を積み重ねてきた結果、呉市の医療費の伸びは、2008年度からの5年間で9%と、全国平均の14%を下回った。