こうした出し分けだけでも、「LINEのコンバージョン率(CVR)は3倍も高い。メールと比較してLINEの方が日常生活に入り込んでいる」と徳丸氏は見る。それゆえ、こうした緊急性の高い内容の場合には、LINEで送った方が、すぐに目を通してもらえる。それが高CVRという成果につながっていると推測できる。
また、LINE上で商品サンプルのプレゼントキャンペーンを告知して申し込みを受け付け、当選者に後日、LINE経由で本商品を案内するといった、LINEで完結する2ステップマーケティングも実施している。
データがツールごとに分散
一方、DMPでは、「Yahoo!DMP」をこれまで活用し、ワタシプラスの顧客データと「Yahoo!JAPAN」のデータを用いた広告配信などに取り組んできた。データを連携することで、広告の対象となった商品の購買履歴を持つ消費者は、広告配信の対象から外すなどして、新規顧客獲得の効率を高めるといった施策を実施し、効果を上げてきた。
ただ、データを活用したマーケティングを進めるにつれ、徐々に新たな課題が浮き彫りになっている。「個々の施策では成果が出ているものの、各サービスが個別にデータを持つため、データの統合的な管理が難しくなってきた」(徳丸氏)のだ。
それぞれのツールでは最適なコミュニケーションを実現できているが、データが分散したことで、横断的なマーケティング施策は実施しづらくなってしまった。もちろん、まったく連携ができていなかったわけではない。一部のサービスの間では、データを連携できていた。だが、すべてを統合するのは難しかった。なぜなら、既に導入していたDMPは、蓄積できるデータの量に限りがあったからだ。資生堂ジャパンダイレクトマーケティング部Web推進室の吉本健二氏は、「POS(販売時点情報管理)システムなどのデータも含めると、量が多すぎて格納しきれなかった」と説明する。
そこで、4月に新たに導入したのがトレジャーデータのクラウド型プライベートDMP「TREASURE DMP」だ。トレジャーデータは、デジタルマーケティングに関連するデータに限らず、企業の持つビッグデータをクラウド上で集計・管理するサービスを提供していた。そのサービスをよりデジタルマーケティングに特化させたのが、TREASURE DMPだ。それゆえ、大量のデータを管理するのに向いている。
資生堂はTREASURE DMPに、MAツールで配信したメールへの反応や広告配信のデータ、POSデータ、ワタシプラスの購買データ、サイトのアクセス解析データなど、あらゆるデータを蓄積する。さらに、第三者の持つオーディエンスデータも併せて蓄える。こうして、どのような情報に関心を持っているのかといった顧客のライフスタイルを分析して、マーケティングに落としこんでいく。
また、従来はワタシプラスを中心としたダイレクトマーケティング領域で、主にデータを活用してきた。今後は、ブランド担当部門とのデータ連携を強める。例えば、ブランド担当部門での宣伝施策と、ダイレクトマーケティングの販促施策は統合できていない。ブランドごとに異なる広告代理店を使っていることもあり、これまでは統合が難しかった。そこで、データの蓄積や運用も含めて、ルールを設定する。そのルールに従う形で、双方で宣伝やマーケティング施策を行うように変え、ブランディングとダイレクトマーケティングの統合を目指す。

日経BP社は7月25日(月)~29日(金)、「D3 WEEK 2016 ~デジタル×データ×デザイン──未来はここから始まる~」というイベントを六本木アカデミーヒルズ(東京・六本木)で開催します。日経デジタルマーケティング、日経ビッグデータ、日経デザインの3誌が協力して、およそ100の先進企業の事例講演、パネルディスカッションなどを実施。デジタル×データ×デザインが可能にする全く新しいイノベーションを“体感”できる5日間です。ぜひ、その詳細を公式サイトからお確かめください(こちら)。
有料会員限定記事を月3本まで閲覧できるなど、
有料会員の一部サービスを利用できます。
※こちらのページで日経ビジネス電子版の「有料会員」と「登録会員(無料)」の違いも紹介しています。
※有料登録手続きをしない限り、無料で一部サービスを利用し続けられます。
Powered by リゾーム?