ただしどの部屋にも、いわゆる家電製品が床やテーブルには置いていない。代わりにあるのが、壁に整然と取り付けられた厚さ4センチ、縦横が34センチの無数のパネルだ。アルミの押し出し成型の薄いフレームで四面が囲まれたこのパネルは、1枚ごとに異なる家電の機能を埋め込んでモジュール化したもの。パネル化された家電を壁に取り付ける機構も独自で考案し、あらゆる機能を壁1面に集約させるという提案で、ライバルひしめく家電市場に切り込んでいくという。

その中心となるのが、OSまで独自で開発した壁掛け型の情報端末だ。普段は時計や天気予報などの情報を流す窓として機能し、スピーカーのパネルと連携させればオーディオ機器となる。iPadと同じような情報検索やコミュニケーションのツールだが、さまざまな企業と連携して、各家庭のコンシェルジュとなるようなサービスをこの端末を使って多数展開していくことを目指している。
例えばタクシーの配車サービス。呼んだタクシーが今どこを走っていて、あと何分で到着するのかが端末を通じて分かる。地域のスーパーやコンビニと連携し、即日配達の買い物ができるなどのサービスを独自の直感的なインターフェースで実現することで、一般的なネット通販サイトをしのぐ、きめ細やかな使い勝手の良さを実現する。
端末以外にも多様な種類の家電開発も進めている。サーキュレーターや空気清浄機、照明、ヘアドライヤー、アロマディフューザー…。家電以外にも、電動アシスト自転車や壁面緑化用の植物、収納、装飾用パネルなど「鴻海のみならず多くの企業と連携をしながら製品や機能の充実を急ぐ」(謝董事長)。前述の情報端末は各製品パネルをコントロールする役目も果たし、各機器のメンテナンスや操作をここから行えるほか「家族の生活パターンを覚えて、それに合わせて製品のオン・オフを自動で行う」「季節や時間帯を考えながら、利用者の好みに応じたアロマを自動で調合する」といったことも可能にする。
世界的な住宅の狭小化を見据える
こうしたさまざま機能を持つパネルを、消費者は自由に組み合わせて使う。狙うのは、家電量販店を通じた小売りではなく、デベロッパーや住宅メーカー、建築家や工務店ルートでの販売だ。まず当面のターゲットは、新築やリフォーム需要。その時に提案がしやすいよう「キッチンやリビング、寝室などに最適化された家電パネルのセットを用意し、サービスも含めて提案する」(謝董事長)考えだ。
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