これからの経営イノベーションにはデジタル、データ、デザインの3つの「D」が欠かせない。2016年7月に新イベント「D3 WEEK 2016」を開催する専門誌3誌が、最新の企業事例やキーパーソンのインタビュー記事などで、その可能性を探ります。

 連載第5回は、7月26日に登壇するUPQ(アップ・キュー)の中澤優子CEO(最高経営責任者)代表取締役が展開している「UPQ式マーケティング」に迫ります。

マーケティング本を読んだことがないというのは本当ですか。

<b>中澤優子(なかざわ・ゆうこ)氏</b><br/><b>UPQ CEO 代表取締役</b><br/> 中央大学経済学部卒。2007年カシオ計算機に入社し携帯電話・スマートフォンの商品企画に従事。2012年3月退社。カフェ経営の傍ら、2014年に参加したハッカソンでIoT弁当箱「XBen(エックス・ベン)」を企画・開発。経済産業省フロンティアメイカーズ育成事業に採択される。2015年7月UPQを設立してCEO 代表取締役に就任
中澤優子(なかざわ・ゆうこ)氏
UPQ CEO 代表取締役
中央大学経済学部卒。2007年カシオ計算機に入社し携帯電話・スマートフォンの商品企画に従事。2012年3月退社。カフェ経営の傍ら、2014年に参加したハッカソンでIoT弁当箱「XBen(エックス・ベン)」を企画・開発。経済産業省フロンティアメイカーズ育成事業に採択される。2015年7月UPQを設立してCEO 代表取締役に就任

中澤:ドラッカーもコトラーも名前は知っていますが、マーケティングと名が付く本は読んだことがありません。ただ(前職の)カシオ計算機時代に一緒だった営業のおじさんたちの働きぶりから、マーケティングとは何かという本質を教えてもらったと思っています。

 私の仕事は商品企画、ものづくりでしたが、「今あるものの延長線上で考えるな」「目の前に出されたら、のどから手が出るほど欲しいと思わせるものを作れ」とよく言われていました。これは顧客の、まだ顕在化していない潜在ニーズを捉えろ、それをどう製品に仕掛けとして盛り込むかに知恵を絞れということ。そんな言葉でマーケティングの根っこのところを、私にも理解できるように教えてくれていたんでしょう。

その教えのたまものなのか、UPQの製品は出た途端にネットで話題になった。中澤さんのことも多くのメディアが採り上げました。

中澤:今までにないコンセプトの製品なので、面白がってくれる人がいるとは思ってました。でも、事前の想像以上に多くのメディアがUPQや製品のことを採り上げてくださって(話題になる回数が)ハネました。

新製品のプロモーションコストはゼロ

 実は今も新しい製品を開発しているところですが、一般的な宣伝広告は、これまで同様、しないでしょう。製品のロット数を考えると4マス広告はお金を掛けるに値しないので。

 会社としての公式FacebookページとTwitterの公式アカウントは設けていて、折に触れて投稿はしていますが、それくらい。プロモーションコストはほぼゼロです。

他の家電メーカーが店舗販売からネット販売重視へとシフトしている中、二子玉川 蔦屋家電やビックカメラ、ヤマダ電機といったリアルな販売チャネルも増やしています。なぜですか。

中澤:1つは、UPQはメーカーで、作っているのは家電なので、お客様には目で見て手で触れて、実物を確かめてもらいたいと思っていたこと。最初から(販売チャネルとして)実店舗は絶対に必要だと考えていました。

 もう1つは、うちの製品に興味を持って、(家電量販店などから)ぜひとも店舗に置きたいと声をかけていただいたことです。

EC(電子商取引)サイトの方が売れるのでは。

中澤:いいえ、店舗とECとを比較すると、実は80対20で店舗の方が売れています。だからと言って、どこの店舗でも買える製品にするつもりもありません。ごく限られた店舗でしか買えないという希少性を大切にしながら、今後も魅力的な製品を開発していくつもりです。

日経BP社は7月25日(月)~29日(金)、「D3 WEEK 2016 ~デジタル×データ×デザイン──未来はここから始まる~」というイベントを六本木アカデミーヒルズ(東京・六本木)で開催します。日経デジタルマーケティング、日経ビッグデータ、日経デザインの3誌が協力して、およそ100の先進企業の事例講演、パネルディスカッションなどを実施。デジタル×データ×デザインが可能にする全く新しいイノベーションを“体感”できる5日間です。ぜひ、その詳細を公式サイトからお確かめください(こちら)。

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