CLUB Panasonicの会員IDは、パナソニックが運営する写真共有サイトや健康管理サービスといった、14サイトの共通IDとなっている。また、各製品のプレゼントキャンペーンなどを実施する、キャンペーンの共通基盤としても利用している。これにより、サービスの利用やパナソニックのサイトのアクセスデータ、キャンペーン応募、所有する製品といった、顧客に関わるあらゆるデータをDMP(データ・マネジメント・プラットフォーム)に蓄積。データを活用したマーケティングを実施して、成功を積み重ねている。

データのマーケティング活用加速

 例えば、会員のデータから、50インチサイズのテレビを所有している人は住んでいる部屋が広いと推測して、マッサージチェアをメールで案内する。アクセスデータから、前日に液晶テレビ「ビエラ」のサイトを閲覧した人を対象に、同製品の特集メールを配信する。こういったメールは「クリック率が数十パーセントに上ることもある」(中村氏)。

 また、製品のレンタルキャンペーンと連動したマーケティング施策も効果を上げている。パナソニックは昨年、持ち運びできるテレビ「プライベート・ビエラ」を当選者が2週間レンタルできるキャンペーンを実施。約3万3000人の応募があった。実際に貸し出したのは2791人だが、応募者はプライベート・ビエラへの関心が高い会員だ。そこで、応募者限定でプライベート・ビエラのキャッシュバックキャンペーンを告知したところ、「かなりの数が購入に結びついた」と中村氏は言う。特に、レンタルの体験者は未体験者に比べて、購入率が5倍高かった。

CLUB Panasonicのスマートフォン向けアプリ
CLUB Panasonicのスマートフォン向けアプリ

 リアルのイベントへの誘導にも効果的だ。パナソニックは昨年10月に、さまざまなパナソニック製品を体験できる会員限定イベント「CLUB Panasonic ファンフェスタ」を実施した。集客を狙うのは30~40代の優良顧客だ。所有する製品などの会員データから、首都圏に住むターゲット層には郵送のDMで告知、それ以外の層にはメールで告知した。その結果、3505人が来場した。データから来場者はすべて把握できるため、来場者限定のキャッシュバックキャンペーンを実施するなどして、購買に結びつけた。こうした施策もあいまって、会員がパナソニック製品に費やす年間の金額は、非会員と比較して4万7000円も高いという調査結果も出ているという。

 さらに、会員を増やし、データ活用も強化するため、3月にはCLUB Panasonicのスマートフォン向けアプリの提供も始めた。これで製品の愛用者登録を一気に簡略化できる。4月以降、一部の製品パッケージに、製造番号などのデータを含むQRコードを印刷。会員は、アプリのカメラ機能でQRコードを撮影するだけで愛用者登録を終えられる。

 ただ、これらはあくまでパナソニック製品に関連するデータに過ぎない。今後はさまざまな業種の広告主から出稿が増え、これまでには取れなかったデータも取得できるようになる。そこから、会員のライフスタイルまで分析できる可能性もある。とはいえ、「あまりデータを使いすぎると、パーソナライズ化が過度になり不安がられる恐れもある」(中村氏)ことから、慎重にデータ活用を検討していく考えだ。

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