仮想通貨と国家の対立

 仮想通貨が広範に用いられるようになれば、現在の国家システムに対する深刻な脅威になる可能性もある。第一に、現在の金融機関が行っている業務の多くを代替することになり、金融機関に重大な影響を与えるだろう(ただし、前述のように金融機関が自ら仮想通貨を作ることになれば、話は別である)。

 第二の問題は、税の徴収に関係する。仮想通貨による取引は匿名性を有しているため、すべての取引を捕捉できない可能性がある。従って仮に仮想通貨による取引が拡大すると、徴税に支障が生じる危険がある。

 第三の問題はキャピタルフライト(資本逃避)だ。国民が自国通貨の将来に信頼を持てなくなると、ビットコインを購入して、ドルなどの価値が安定した通貨に乗り換えるなどの動きが発生しうる。

 これは、単なる可能性ではなく、現実に起きたことである。2013年の秋に、キプロスでビットコインへの逃避が生じた。また中国の人民元でも、同様のことが発生した。2014年1月にビットコインの価格が1ビットコイン=1100ドルを超える事態になったのは、中国からの資本逃避に使われたからである。

 この事態を受けて、中国政府は、中国の銀行がビットコインの取引に関与することを禁止した。ビットコインの価格が2014年に下落したのは、このためである。

 このような事態は、国の存立にとって重大な脅威だ。しかし、ビットコインの取引そのものを規制しようとしても、インターネットの使用を禁止しない限り不可能である。

ブロックチェーン技術の応用

 仮想通貨はブロックチェーンの技術を応用したものであるが、ブロックチェーンの応用範囲は仮想通貨にとどまらない。

 重要なものとして、第一に、「スマートコントラクト」の実行がある。ここで、スマートコントラクトとは、コンピュータのプログラムの形に書くことができる契約である。人間が恣意的な判断を下さずにアルゴリズムに則り自動的に実行できる契約のことだ。

 様々な経済的な取引をスマートコントラクトの形にし、ブロックチェーンで運営することが提案されている。

 その一つは、証券の取引である。これまでも、カラードコイン(標準的なビットコインに独自情報を付加して実現する独自コインで、あたかも色を付けたような意味合いからこのように表現)として、実験的な試みが行われている。例えば、米国の証券取引所ナスダックは、未公開株の取引に関して、ブロックチェーンを用いた実証実験を行ってきたが、それに成功したと2015年末に発表した。

 こうしたことが実用化されれば、究極的には、すべての有価証券の取引を自動化することが可能になり、証券業に多大の影響を与えることになるだろう。

 また、不動産登記をブロックチェーンで行うことも提案されている。さらに、自動車などの耐久消費財の所有権移転を自動化することが可能である。