国際送金

 送金コストの低さが大きな効果をもたらすもう一つの分野は、国際送金だ。

 現在、国際送金の多くは銀行システムを介して行われるが、個人の比較的少額の場合の送金コストは、かなり高くなる。

 このことは、国際的な出稼ぎ労働者の祖国への送金に関して、大きな問題とされてきた。アフリカから中近東への出稼ぎ、あるいはフィリピンから香港への出稼ぎといったケースだ。こうした地域に関しては、ビットコインを用いて従来の手段よりは低いコストで送金を行えるサービスが、すでに登場している。

 開発途上国と先進国との間の送金のコストが低下すれば、出稼ぎ労働だけでなく、先進国からのアウトソーシングに使うことも可能になる。例えば日本の企業が業務の一部をアジアの新興国にアウトソースし、その送金をビットコインによって行う。現在では、このような連携は潜在的には可能であっても、送金コストが高いために現実的なものになっていない。こうした送金システムの確立は、日本にとっても新興国にとっても、極めて重要な意味を持つだろう。

 多くの開発途上国において、銀行の支店網は十分に整備されていない。そのため、ビットコインのような新しい送金手段が広範に利用される可能性がある。

仮想通貨間の競争

 ビットコインなどの仮想通貨に対しては、批判もある。批判の多くは、国が発行して流通をコントロールできる既存の通貨と異なり「その供給(発行量)は時間が経つと一定になる」(公開された2009年から毎日ほぼ10分ごとに発行されているが、およそ4年ごとにその発行量が半減し、合計2100万ビットコインを上限とすることが最初から決まっている)など、ビットコインに特有の事柄を問題としている。

 しかし、仮想通貨はビットコインだけではない。それ以外の仮想通貨が、既に600以上も登場している。それらの中には、ビットコインとは異なる供給スケジュールを持つものがいくらでもある。

 仮にビットコインが供給スケジュールの点で問題を持つとしても、他の仮想通貨がそれに代替することは十分に考えられる。このように、仮想通貨間の競争によって、最も適切な構造を持つ仮想通貨が選ばれてゆくことになる。従って、ビットコインだけではなく、仮想通貨全般を対象として捉え、評価を行う必要がある。

 様々な仮想通貨は、様々なメカニズムで運営されている。ビットコインのクローンに過ぎないものもあるが、かなり違う方法で運営されているものもある。

 ただし、それらに共通しているのは、中央集権的な管理主体が存在しないことだ。仮想通貨は、ピア・ツー・ピアという分散型コンピュータの仕組みによって運営されている。これらのコンピュータが「ブロックチェーン」という公開台帳を維持することによって、取引を実現しているのである。従来の電子マネーに比べて送金コストを極めて低く抑えることができるのは、このような構造のためだ。

 以上のような利点があることから、日本も含めた世界の主要銀行は、自ら仮想通貨を作る実験を始めた。それによって国際送金などのコストを低下させることを目的としている。

 中央銀行も仮想通貨に関心を寄せている。中国人民銀行が独自の仮想通貨を作る計画を発表している。カナダやオランダの中央銀行も似た試みを始めている。

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