例えば、カード利用データはすべてカテゴリーに分ける形でDMPに取り込んでいる。東京・渋谷の子供向け洋品店でのカード利用であれば、「子供」「渋谷」といった2つのカテゴリーに分類する。生命保険の引き落としなら「保険」、高級ブランド店であれば「ハイブランド」といった具合だ。6月から、クレディセゾンの会員サイト「Netアンサー」に枠を設けて、広告配信を始めている。7月からは外部メディアへと配信の範囲を広げる。データの解析やDMPの構築は、デジタルマーケティング支援のデジタルガレージと共同で進めた。「データは持っていても、それを分析するデータサイエンティストは当社には在籍していない。その役割をデジタルガレージに担ってもらう」と磯部氏は説明する。

今後は広告事業を展開

 これらのデータを基に、顧客のニーズに合わせたサービスや商品を広告で案内する。ネットでハワイ旅行について調べている20代の女性で、カード利用の限度額が間近の顧客がいれば、広告で旅行前の限度額増額を案内する。毎月、高額利用する40代の男性の顧客には投資向け商材を案内する広告を配信する、といった具合だ。

 また、将来的にはクレディセゾンが提供するスマートフォン向けアプリとの連携も実現させる。例えば、池袋の家電量販店で買い物をした顧客に対して、近隣の別店のクーポンをアプリに配信する。こうして買い回りを促進することで、カード利用の機会の増加を狙う。

6月から自社サイト上に広告枠を設けて、カード利用データに基づく広告配信を始めた
6月から自社サイト上に広告枠を設けて、カード利用データに基づく広告配信を始めた
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 ただ、今回の取り組みのような、自社のマーケティングへのデータ活用は、クレディセゾンにおけるビッグデータ事業の序章にすぎない。同社は、2018年の中期経営計画において、「イノベーションの実現とビジネスモデル・チェンジ」というスローガンを掲げる。このスローガンの下、先端技術を活用して、新たなビジネスモデルを生み出す。そうして、2018年度に連結経常利益を、2015年度実績から162億円の増益となる、600億円を目指す。

 ビッグデータ事業も新たな収益を生み出すための柱の1つだ。今後、クレディセゾンは保有するさまざまなデータを活用して、新たな事業を生み出していく。具体的に実現が視野に入っているのが、広告事業だ。クレディセゾンの持つデータを活用した広告配信サービスを、他の広告主にも提供していく。

 「カード会社として先頭を切って、カードデータの利活用に挑戦していく」と磯部氏は意気込む。国外では、マスターカードが、広告主にカード利用データを販売するなど、ビッグデータ事業で新たな収益を生み出している。だが、国内ではかつて東日本旅客鉄道がIC乗車券「Suica(スイカ)」のデータ販売で消費者から猛反発を食らい、販売中止に追い込まれるなど、データの利活用を巡る“苦い経験”もあった。クレディセゾンもデータの外部提供は、消費者の理解を得ながら、慎重に進める考えだ。

日経BP社は7月25日(月)~29日(金)、「D3 WEEK 2016 ~デジタル×データ×デザイン──未来はここから始まる~」というイベントを六本木アカデミーヒルズ(東京・六本木)で開催します。日経デジタルマーケティング、日経ビッグデータ、日経デザインの3誌が協力して、およそ100の先進企業の事例講演、パネルディスカッションなどを実施。デジタル×データ×デザインが可能にする全く新しいイノベーションを“体感”できる5日間です。ぜひ、その詳細を公式サイトからお確かめください(こちら)。

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