とにかく情報源に会いに行く

 しかも、エアビーアンドビーは普通のアプリやソーシャルネットワークよりもはるかに複雑だ。アイデア自体は単純だが、使い勝手のいいサイトの裏にあるビジネスと運用面の課題は、表から見るよりはるかにややこしい。セコイア・キャピタルのマネジング・パートナーを務めるダグ・レオンはあるとき、チェスキーを脇に呼んで、セコイアの投資企業の経営者の中でチェスキーの仕事が一番難しいと伝えたほどだ。

 テクノロジー企業の経営にありがちな課題をすべて抱えているうえに、エアビーアンドビーは誰よりもグローバルだった。約200カ国で事業を展開し、その国々でオフィスと社員を抱え、海外拠点を運営しなければならない。一方で、エアビーアンドビーは決済会社でもあり、地球の至るところで毎日数十億ドルもの取引を扱っている。決済につきものの不正やリスクにも気を配らなければならない。

 もちろん、毎晩何十万人ものゲストが見知らぬ人のベッドに泊まるのだから、悲惨な事件が起きる可能性は充分にある。誤解や文化の違いは言うまでもない。そして当然、規制の問題があり、都市ごとの対策を実行するにはかなりの時間と注意と公共政策の知識も必要になる。

 チェスキーはもともと、リーダーとしての成長に欠かせない能力をすでにいくつか備えていた。美大のロードアイランドスクールオブデザイン時代から、突飛なことを仕掛けるコツを心得ていて、病的に好奇心が強かった。その他のスキルは、その道のプロに次から次へと教えを乞い、リーダーに必要な知識と経験をがむしゃらに取り込んでいった。もちろん若いCEOはみんなアドバイスを求めるものだが、チェスキーの場合はしつこく、こまごまと、うんざりするほどいつまでも聞いていた。チェスキー自身はその学習方法を「情報源に行くこと」と呼んでいる。

 あるトピックについて10人に話を聞き、すべてのアドバイスをまとめるのではなく、その半分の時間で一番確かな情報源を探り、誰よりもそのことに詳しい人をひとり見つけて、その人だけに話を聞く。「正しい情報源を見つけられたら、早送りで学習できる」とチェスキーは言う。

 この学習の方法は、初期のアドバイザーたちとの間で始まっていた。マイケル・サイベルやYコンビネーターのポール・グレアムとの毎週の課外授業。セコイアのグレッグ・マカドゥーとのロッコでの朝食。次の投資ラウンドでは、リード・ホフマン、マーク・アンドリーセン、ベン・ホロウィッツといったシリコンバレーの大物と知り合った。テクノロジー企業の育成にかけてはみな伝説といえる存在だ。成功するとさらに大物との人脈ができ、会社の拡大とともに、チェスキーは特定分野の情報源を探してアドバイスを受けるようになった。

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