
それにエアビーアンドビーのビジネスは、ほかの企業と比べてもかなり難しい。ユーザーは世界3万4000都市と広範囲だし、トラブルもある。国や市などによって民泊に対する規制はさまざまで、対応にも骨が折れる。それほど大変なビジネスを切り盛りする手腕をビジネスの素人で、創業前は失業状態にあったブライアン・チェスキーは、「学習の鬼」と呼ばれるほどがむしゃらにスキルを身に着けた。
エアビーアンドビーの軌跡を追ったノンフィクション『Airbnb Story』から一部を抜粋して、チェスキー流の学習法を紹介しよう。

(以下『Airbnb Story』より抜粋)
ブライアン・チェスキーにとっては険しい道だった。エアビーアンドビーの顔になったうえ、ビジネスの経験がまったくなかったからだ。「知識ゼロだった。ほとんどすべてが目新しかった」とチェスキーは言う。
それなのに、CEOとしてのスキルを普通のやり方で学ぶ時間はゼロだった。先任者に育ててもらうとか、社内の主要事業を率いるとか、MBAを取るとか、そんな暇はなかった。きちんとした研修でさえ、お笑い草だった。一秒も時間がなかったのだ。エアビーアンドビーはあっという間に拡大し、数カ月に一度脱皮しているようなもので、どこかでいつも危機が起き、企業文化を築かなければならず、全員がチェスキーのビジョンと方向性をじっと見つめていた。
チェスキーは一夜にしてCEOになる必要があった。待っている時間はなかった。「学習曲線なんて悠長なことは言っていられなかった。ロバート・マクナマラの言葉にもある。戦争やスタートアップにいる人間に学習曲線はないってね」。チェスキーはまた歴史上の名言を持ち出した。
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