危機のときはみんなの合意で決めてはいけない

 8月1日月曜日、チェスキーは強い口調の手紙を公開した。「僕たちは完全にやりそこなった。今週の初め、状況を説明するブログを書いたけれど、あれは僕の本心ではなかった。だから言わせてほしい」

 エアビーアンドビーは今回の危機の対処を間違い、いつも価値観に添って行動することの大切さを忘れていた。エアビーアンドビーはEJを失望させた。僕たちはもっと早く対応すべきだった。もっと気遣いを持ち、断固とした行動を取るべきだった。ホストが受けた損害に対して、過去の事件も含めて5万ドルの補償を提供することを発表した(数カ月後、補償額は100万ドルになった)。EJが指摘していたように、24時間のホットラインを開設することを発表し、顧客サポートを倍増すると約束した。

 それはすべて、アドバイスに反することだった。「周りの人たちは、『これも議論しなくちゃ、あれも確かめてみないと』なんて言ってた。僕は『いや、もうやるって決めたから』って言ったんだ」とチェスキーは言う。ひとつだけチェスキーが取り入れたアドバイスがある。マーク・アンドリーセンは、夜中にチェスキーの手紙をじっくり読み、謝罪の手紙に自分の個人メールアドレスを付け加えてほしいと告げ、補償額にゼロをひとつ加えて、5000ドルを5万ドルにした(サンフランシスコ市警はその後、逮捕を認めた。エアビーアンドビーは和解したが内容については公表を控えた)。

 この経験からチェスキーが学んだのは、コンセンサス(合意)で決定するなということだ。「危機のときコンセンサスで決めると、中途半端な決定になる。それはたいてい最悪の決断だ。危機のときには、右か左かに決めるべきなんだ」

 それ以来、考え方をひとつ上のレベルに持っていくことを、「ゼロをひとつ加える」と呼ぶようになった。のちに、この経験は、エアビーアンドビーの「再生(リ・バース)」だったとチェスキーは語っていた。

著者プロフィール

著者=リー・ギャラガー/フォーチュン誌アシスタント・マネジング・エディター。フォーチュン誌が選ぶ「最もパワフルな女性サミット」の共同議長を務め、「40歳以下の40人」も担当。CBSの「This Morning」、MSNBCの「Morning Joe」ほか、CNBCやCNNでもコメンテーターを務めている。ニューヨーク在住。