撮影もクレーム対応も決済も全部、自分たちでやる

 みんな写真が下手で、2009年当時はアップロードの仕方がわからない人も多かった。そのために、実際は素敵な部屋でも、写真では暗くて薄汚く見えた。そこで、ホストの部屋にプロの写真家を無料で送り込むことにした。だが、写真家を雇うお金がなかったので、チェスキーが美大の友達からカメラを借りて自分で写真を撮った。前日にCEOとして出向いたホストの家に、翌日写真家として訪問することもしょっちゅうだった。

 また、チェスキー自身が決済システムになり、バックパックの中から小切手帳を取り出して、訪問したホストに紙の小切手を書いて渡していた。クレームの電話はすべてゲビアが自分の携帯で取っていた。2人は、家を一軒一軒訪問してサイトに登録してもらい、ミートアップを組織し、誰にでも近寄って自分たちのサービスを紹介し、アパートを使って小遣い稼ぎができると説明していた。受け取ったフィードバックを毎週持ち帰ってブレチャージクに伝え、サイトを改善し調整していった。

 2人はユーザーの少ないワシントンDCにも行った。1月末の一大イベントに合わせてもう一度、派手にサービスを発表する計画を立てた。バラク・オバマの大統領就任式でのローンチだ。就任式宿泊予約ドットコムというサイトを立ち上げ、デンバーの民主党大会でうまくいったマスコミ戦略を使い、個別訪問やミートアップで一人ひとりに的を絞り、あの手この手で部屋を掲載させ、ファンのコミュニティを盛り上げた。最終的にワシントンDCで700人のホストを獲得し、150件の予約が成立した。

転機になったミュージシャンのリクエスト

 こうした経験から、自分たちがこのビジネスを狭い目で見ていたことにも気がついた。それまでは、本物のベッドを貸し出せる場合でも、エアマットを使うことを条件にしていた(本物のベッドを貸したかったホストに、ベッドの上にエアマットを置けば大丈夫だとチェスキーは答えたことがあった)。

 あるホストはこれからツアーに出るミュージシャンで、アパートを全部貸してもいいかと聞いたのに、チェスキーとゲビアはダメだと言った。ホストがいなかったら、誰が朝食をつくるんだ? そのミュージシャンとは、バリー・マニロウのドラマーのデビッド・ローゼンブラットで、エアベッド&ブレックファストのビジネスを永遠に変えたのが彼だった。

 ローゼンブラッドの頼みがきっかけで、はるかに大きな可能性が開けた。朝食は出さなくてもいいことにして、部屋をまるまる貸し出すこともオプションに加えた(ローゼンブラットはツアー先のステージ裏からチェスキーに電話をかけてきて、自分のアカウントにログインできないと文句を言っていた。その後ろで、「バリー! バリー!」と声援が聞こえた)。

 ポール・グレアムもまた初期のモデルの限界に気づき、この頃にエアベッドの条件を外して潜在市場を広げるべきだと指摘していた。彼らは「エアバンブ(Airbanb)」のドメインを買ったが、それでは「エアバンド」みたいだということになり、その代わりに「エアビーアンドビー(Airbnb)」を選んだ。