ポストディーゼルの長い道のり

 苦境のアウディ、そしてVWグループに残されている道は、いち早くポストディーゼルに乗り出す他ない。

 11月18日、VWグループは「デジタル化」「電気自動車(EV)化」を発表した。これらの方針をもとに、ポストディーゼルとして、EV生産に本格的に乗り出すことを明言した。その中のグループ戦略として、アウディは、ライバルのダイムラーやBMWらと協力してドイツ国内400カ所に、EVの充電設備を敷設する。

 しかし、肝心のEVの開発は遅れている。加えて、これからむこう10年間足らずで、アウディを含むVWグループが大きくEV中心へと変化するかどうか、筆者には大きな疑問が残る。長らくガソリン及びディーゼルエンジンをビジネスの柱としてきたVWにとっては、構造が大きく異なるバッテリー技術、それを担う人材の入れ替えは、容易ではない。

  EVの構造、エンジニアリングのコンセプトは、ガソリン、ディーゼル車とは比較にならないほどシンプルだ。主役は電気モーターとバッテリー。ディーゼルインジェクター、ノズルなどの複雑な部品やコンポーネントは必要ない。極端な話、走行パワーに注文さえつけなければ、電気モーターとバッテリーのついた車軸に、VWのビートル、ポルシェのカレラといったボディーを好みで載せればいい。

 その一方で、シンプルさゆえに、プライドを持って開発してきた従来車のエンジニアとしての面目が台無しになってしまう。この致命的な心理的打撃が、EVへの切り替えを遅らせてきたことは、否めない。

 実は、VWは、今回のスキャンダルが発覚する前、2010年から、自社製リチウムイオン・バッテリー電極成分の研究は続けている。電池の専門技術を保有するVarta(ヴァルタ)と共同出資し、Volkswagen Varta Microbattery GmbH(フォルクスワーゲン・ヴァルタ・マイクロバッテリー)を設立、EVの要となるバッテリー開発を進めている。

 同社を筆頭に、VW内部でも、電池技術を意欲的に開発するエンジニアは、存在する。彼らは日本の高水準のバッテリー技術に敬意を払い、日本からの専門家たちとの議論にも前向きだ。

 日本のリチウムイオン電池技術をドイツの自動車業界に紹介していた筆者には、印象深い思い出がある。2008年から2009年にかけて、当時VWの技術開発トップだったユルゲン・レオホルド氏と、アウディで同分野の最高責任者であったヴィリベルト・シュロイター氏に、車搭載用の日本のリチウムイオン電池について様々なプレゼンを行った。

 技術者として彼らの関心は高く、小さな会議室に入り切らないほどの関係者が集まった。技術に熱心に耳を傾けていたことを覚えている。

 ところが、サンプルの購入段階になると、途端に話が進まなくなった。後に聞くと、経営陣からのストップがかかったのだという。現在に至るEVへの取り組みは、一事が万事、このような状況だったと推察できる。