ただし、アンケート対象者の3分の1が、国民投票の結果は英国離脱となったが、実際に英国とEUの交渉が見えるまでは、具体的なアクションを即座にとらないと回答している。フランクフルトの金融ロビー団体であるマイン・ファイナンシャル協会は、今後、5年間で、約1万人の金融関係者がロンドンからフランクフルトに移転すると予測している。

 専門家たちはどう見ているのか。EUの経済財務委員会は7月に、英国の国民投票後の経済を予測したリポートを発表している。これによると、BrexitによるEUのGDP成長率の低下は避けられないと見ている。レポートは今後の経済見通しについて、複数のシナリオを予測している。

誰がEUの結束を指導するのか

 楽観的なシナリオの場合、EU27カ国のGDP成長率は、2017年にマイナス0.2%、悲観的なシナリオでは、マイナス0.5%と分析している。英国の経済見通しは、両シナリオともEUよりも厳しく、GDPは楽観シナリオで、マイナス0.9%。悲観シナリオでマイナス2.6%としている。

 目を引くのは、通常冷静な数値分析で定評がある同リポートの文中に、「ショック」「センチメンタル」という表現が頻繁に記されていることだ。それだけ、Brexitの欧州に与える影響を警戒しているとも言える。同様に、ドイツ・バイエルンの経済金融投資アナリストも「GDP縮小は、確かだが、英国がEUから離脱するかの詳細はこれから」と述べていた。

 何より不安なのは、政治面で欧州をうまくまとめられる政治リーダーがいないことだろう。これまで欧州の政治を指導してきたメルケル首相にも、人気と指導力に陰りが見え始めている。EUの結束、そしてNATO(北大西洋条約機構)の今後へ大きな変革が強く要求される現在、同首相に任せるのは心もとない。

 そうした状況の中、8月22日にはイタリアのレンツィ首相が、メルケル首相とフランスのオランド大統領をナポリ沖のヴェントテーネ島に停泊中のイタリア航空母艦上に招待した。EUの政治経済双方での新規結束を強めようとイニシアチブを取り始めたと受け止められた。

 もっとも、財政難にあるイタリアは、ギリシャ同様に、ブリュッセル・EUからの経済支援が不可欠であり、EU全体の指導者という点では説得力に欠ける。レンツィ首相のこの試みが、即、EUに新風をもたらすかは、非常に疑問である。

 メルケル首相は、9月16日にスロヴァキアで開催されるEUサミットに備え、ポーランド、チェコ、スロヴァキア、ハンガリー、バルト3国などとの個別会談を開始している。英国が参加しないこのサミットでは、Brexitはもちろん、対トルコとの交渉など重要な議題が山積している。しかし、オランダ、オーストリアが、すでに、難民問題と対トルコ外交面でメルケル路線に反対姿勢を示している。8月25日のチェコ訪問では、プラハ市民からの抗議デモを受けており、EU加盟国が足並みをそろえることは、非常に難しい状況だ。

 英国のEU離脱が決まった後も、今ひとつまとまりに欠けるEU。このまま、交渉が始まらずに時間だけ過ぎれば、そのマイナス影響はEUにとってさらに大きくなる可能性がある。Brexitで窮地に立たされているのは、英国よりもEUという見方もできる。EU本部のあるブリュッセルは、英国メイ首相の早期の離脱交渉開始を心待ちにしている。