もちろん、徴兵制はBrexitの余波の1つに過ぎない。英国でビジネスを展開するドイツ企業や、英国と連携して研究開発をしている研究機関も、見通せない先行きに不安を抱いている。

不安におののくドイツ企業

 今年7月現在、英国でビジネスを展開しているドイツ企業は約2500社。約40万人のドイツ人が、英国に駐在勤務している。いずれも、英国で強固な事業基盤を築いているケースが少なくない。

 例えば、シーメンスは、現在約1000人の従業員を動員して、ヨークシャーデールズ国立公園の近くハル港湾に、出資額3億1000万ポンド(約 430億円)の大規模な風力発電用のウィンドローターのプラントを展開している。水素・窒素ガス等で有名なリンデは、英国市場からの売上が、売上高の約1割を占めている。

 BMWは、小型車MINIをオックスフォードで生産している。その他、エコ関係のバイオガス、弁護士、通訳事務所など、多くのドイツの中小企業が、英国内で活躍している。

 多くの企業が最も懸念しているのは、Brexitによって雇用にどう影響が出るかという点だ。その行方は今後の交渉次第だが、多くの企業は従来の就労条件が変わることを恐れる。特に、積み立てた企業年金が、英国のEU離脱後も同じ条件で継続できるか否かには、大きな関心が寄せられている。

 このため、ドイツ連邦海外業務振興機構は、英国駐在者がいるドイツ企業に対し、該当者年金失業積み立てなどが今後も継続的に該当者に給付されるように、最新の情報を得るよう呼びかけている。ドイツ連邦外務省によると、英独間の2重国籍取得が可能なため、自発的に同申請届出をだすケースが急増しているという。

欧州学術研究機関も影響避けられず?

 これまで、英国と連携してきた学術研究機関も、Brexitの影響を懸念する。

 現在、欧州全体で推進している衛星プロジェクト・ガリレオおよびコペルニクス、イーター国際熱核融合実験炉などには、英国からも優秀なスタッフが参加している。しかし、Brexitにともない、研究基金分担配分、英国研究スタッフたちの待遇が変わる可能性がある。

 その行方は今後の交渉次第だが、長期に安定した環境を求める研究機関の一部では、英国側・欧州大陸側から英国研究者を外さざるを得ないのではないか、との悲観的見方が出てきている。ユンケル欧州委員会委員長によると、現在の英国からの研究者がEU公務員である場合は、EU内に留める計画である。

 悲観的な見方の一方で、Brexitを前向きにとらえる動きもある。その最たるものが、ドイツの金融都市フランクフルトだろう。フランクフルトのあるヘッセン州政府は、英国の国民投票直後から、英国の金融機関をフランクフルトに誘致する使節団を送り込んだ。

 ドイツの週刊誌Der Spiegelは、Brexitが決まった直後、ドイツ・英国のいずれかに本拠地を置いている555の投資家、資産運用管理会社、ファイナンシャルアドバイザーに対し、英国・ロンドンからドイツ・特にフランクフルトへのビジネス拠点移動についてアンケート調査を実施した。

 その結果、すでにドイツに本社を置いているアンケート対象者の82%、現在英国に本拠地を持っている対象者の69%は、フランクフルトが今後、金融、ビジネスの中心地になると見ており、双方あわせて半数以上の57%は、今後フランクフルトの不動産物件の価格が急騰、一方、91%が、英国の不動産価格は、逆に下がると見込んでいる。