このような複雑なエネルギー問題について、ドイツ政府はどう対応しようとしているのか。メルケル政権は、直接的なコメントは避け続けている。いや、できないでいる。
理由は、2011年、福島第一原発爆発事故当時、メルケル首相は関係閣僚や原発の専門家にほとんど相談せず、独断でドイツの脱原発を発表したためだ。原発降板の賛否、経費等について、内閣で熟慮する時間が与えられず、状況を正確に把握できなかった。
結局は他国の原発に依存せざるを得ない?
連邦制をとるドイツでは、政策決定施行に際しては、必ず関連専門機関のアドバイスを求めてきた。メルケル政権以前から、原子力関係は連邦放射能保護庁(BfS)が、科学データにもとづき連邦政権と関連各州へのガイドラインを示している。放射線医療、原発等の使用後の放射能汚染物質の処理、収納保管場所については、現在の地質状況を考慮し、ニーダー・ザクセン州のアッセ(Asse)、コンラッド(Konrad)、ゴアレーベン(Gorleben)を候補地として推薦している。しかし、放射能汚染物質誘致反対の住民と廃棄物処理産業を誘致して失業対策にしたいという人々の激論の間で、現在も結論は出ていない。
アッセは、既に医療用に使用された放射線廃棄物の一時保管場所として使われているが、緑の党(BÜNDNIS 90/DIE GRÜNEN)が、腐食したドラム缶に入った同廃棄物が、岩塩層に非常にずさんに放置されている状況を発見。早急な収納管理改善を強く要求しているが、30億ユーロ(3800億円)もの追加運営負担費が計上されている。現在のところ、連邦、州、地方自治体を通して、国民がどのように負担するか、不明確のままだ。
増え続ける電力消費、課税や原発の諸問題について、ドイツの公的経済研究機関、欧州経済情報研究所のハンス・ヴェルナー・シン教授は、「マクロ経済学上からみると、フランス、チェコのドイツ近隣諸国の原発による電力を購入するしかない」と言う。
しかし、現実には難しい。今年3月、アルザス・フェッセンハイムにある、フランスで一番古い原発で、電気回路のショートにより汚染された3000リットルの冷却水の流れを正常に処理できなかったという2年前の事実が、隣接するドイツ側のバーデン・ヴュルテムベルグ州政府に初めて知らされた。チェコのドイツとの国境に近いテメリンにある原発でも、微量の放射線漏れが、頻繁に報道されている。
仮にドイツが国外から原発の電力を調達するにしても、近隣諸国の原発の安全性には、大きな疑問符がつく。継続的に放射線汚染をコントロールできることを完全に保証できないならば、安易に原子力発電に依存し続けるべきではない。
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