電子たばこは中国人が発明?

 実は、現在の電子たばこの仕組みは2003~04年頃に、中国人の薬剤師が「発明」したという説が有力だ。さらに、欧米系のベンチャーは生産拠点を構えず、商品開発やブランディングに特化した「ファブレス」が主流。そのため、製造委託先として重宝されているのが、中国のメーカーというわけだ。

 JTIの中島氏は「電子たばこはまだ生産の完全な自動化ができておらず、手作業での組み立てが中心。そのため、中国の工場などに行くと、若い女性らが数百人並んで、一斉に作業をしているような光景がある」と語る。一定水準の技能があり集中生産も可能な中国に頼らざるを得ないというわけだ。

市場拡大の一方、適正な規制も必要になる

 一方で、紙巻きたばこに関しては、中国は世界の消費量の4割を占める最大の消費国でありながら、その製造・販売は専売企業が独占しているという特殊な構造も持つ。「中南海」などの著名ブランドもあるが、「マールボロ」や「ウィンストン」のように世界中で売られているわけではない。

 紙巻きたばこでは「鎖国政策」を取る一方、電子たばこに関しては「世界の工場」として存在感を高める中国。今後市場がさらに拡大すれば、中国製の電子たばこが世界を席巻する可能性も高まることになるだろう。

 電子たばこに関しては規制の整備も進んでいる。米国では米食品医薬品局が18歳未満への販売禁止などを盛り込んだ規制案を今年5月に発表。欧州連合(EU)でも2016年から原則ニコチン濃度の上限を20mg/mlとし、ニコチンの依存性を警告する表示も義務化された。一方、英国では当局の認可を受けた製品については、禁煙補助薬として病院での処方も可能になっている。

科学的な検証が重要

 インターネット上では電子たばこの安全性に関する議論も活発で、「中国製だから危険」といった憶測も飛び交う。中国製だからという理由だけで電子たばこの危険性をあげつらうのは暴論以外の何物でもないが、それだけ電子たばこという製品の性質や定義、科学的な研究が定まっていない証左とも言える。

 JTIの中島氏は「規制の整備や研究が進むことで、今後は電子たばこの分野の競争は新たな段階に入る。より科学的なエビデンスに基づいた製品の開発やブランディングが重要になる」と指摘する。大手の本格参入で競争が一層激化するなか、メーカーに求められる役割もより大きくなりそうだ。

*当連載は、日経ビジネス2016年6月13日号特集「JT かすむ未来図」との連動企画です。こちらもあわせてご覧ください。