中核9ブランドに注力

ダニエル・トーラス氏

 特に近年JTIが存在感を高めているのがドイツ、チェコ、ブルガリアといった中欧地域だ。2010年からの5年間で販売数量は25%増え、各国でのシェアもおしなべて上昇している。中欧を統括するダニエル・トーラス役員は「先進国と発展途中の国が混在している同地域では、共通の戦略とエリアごとのきめ細かなマーケティングが非常に重要になる」と話す。

 一方、特集でも紹介したように、JTの海外事業は岐路に立たされてもいる。先進国での規制強化、新興国での競争激化により、JTIの実力が試されているのだ。そこでJTIが近年特に注力しているのが、「GFB(グローバル・フラッグシップ・ブランド)」と呼ぶ9つの主要ブランドの展開だ。

 GFBは世界2位のたばこブランドである「ウィンストン」をはじめ、「キャメル」や日本のトップブランド「メビウス」など。今年に入り、約6000億円で買収した「ナチュラル・アメリカン・スピリット(アメスピ)」も加えられた。

 JTIで営業とマーケティングを統括するアントワン・アーンスト役員は「ブランドの育成に『万能薬』はない。価格戦略や税制、消費者の好みなどは各市場で全く違うため、細かいリサーチと息の長い投資が必要だ」と強調する。各地域の販売動向に応じて重点ブランドを柔軟に組み替え、伸ばしていこうというのがJTIの戦略だ。

アントワン・アーンスト氏

 例えば欧州では知名度が高く、中位価格帯のウィンストンをメーンにしつつ、比較的高価格帯のキャメルやグローバル販売を強化しているメビウスを組み合わせる。逆にアジアでは日本発のブランドとして人気のあるメビウスをプレミアム製品として浸透を図る。また、これ以外のGFBが強い地域ではまた別のブランドを中心に拡販しつつ、新たにアメスピを投入するといった具合だ。実際、2015年のJTIの販売実績では総数量は1%減となったものの、GFBに限れば4.3%増。全体に占めるGFBの割合は69%に高まっている。

「JTI出向組」が存在感

 アーンスト氏は「ナンバーワンを目指す上では、フォーカスと優先順位が非常に重要。アメスピは日本以外の市場でも大きな可能性があり、着実に育てていきたい」と話す。今年4月からはアイルランドで新たに売り出したほか、ドイツなどすでに展開している国でも販売を強化する方針という。

 JTの成長をけん引してきたJTIの存在は、今やJT本体にとっても単なる海外子会社の枠を超え、人材育成でも重要な役割を担う。ジュネーブの本社には約100人、その他地域も含めれば約180人を日本から派遣。若手は研修として、管理職クラスは実際の運営で一定以上の責任を持ち業務に当たっている。

 JT本体でもいわゆる「JTI出向組」は年々増えており、今後はより大きな影響を持つようになるのは間違いない。グローバル化の成功事例のさらにその先に進めるかは、JTとJTIの「親子関係」の深化にかかっている。

*当連載は、日経ビジネス2016年6月13日号特集「JT かすむ未来図」との連動企画です。あわせてご覧ください。