JT本体の取締役にはつかず

 具体的には、海外たばこ事業を所管するJTIは、最終的な事業の責任をJT本体でたばこ事業本部長を務める岩井睦雄副社長が担う。事業の計画や報告などはすべて上げられ岩井副社長が承認する一方、どの地域にどのようなブランドを投入し、販促費をどの程度かけてどのように売るかといった運用についてはJTIに任せているといった仕組みだ。

寺畠副社長

 R&D(研究開発)や人事、財務などJT本体の各担当役員も各部門でのこうした決裁に関わっている。寺畠氏は東京での役員会などにも出席し、JTとJTIのスムーズな意思疎通を図る「橋渡し役」。「年初にフォーカスすべき目的や数字上の成長目標の提示があるほかは、基本的には全て任されている状態。JTIの役員陣は東京から信頼されていると実感を持っている」と説明する。

 ただ、売上高・利益で6割を稼ぎ出すJTIだが、トーマス・マッコイCEO以下その役員はJTの取締役には1人も名を連ねてはいない。JTの小泉社長はその理由について、「彼らがここまで成長できたのは、オペレーションに特化してもらったことが大きい。上場会社の取締役としてやらなければならないことは全て東京で引き受けることで、全エネルギーを海外事業の強化に注いでもらったことが大きな成功要因になっている」と説明する。

 さらに、こうしたJTとJTIの関係は、JTIが事業を手がける日本と中国を除く約120の国・地域でも適用されている。

 ジュネーブの本社はグローバルで事業を統括する心臓部として、営業、マーケティングといった事業部門だけでなく、財務や人事といった間接部門も持つ。その下にアジア、中欧などエリアごとの地域本部があり、さらに国ごとに設置された現地法人が現場でのビジネスを担う。本社は全体的な戦略を組み立て管理する一方、個々の国でのブランド投資や規制当局へのロビー活動などについては現地法人に大きな権限を与えている。

 実際、こうした仕組みを構築したことで、JTIはM&Aによる規模拡大だけでなく、欧州では自力でシェアを高めるなどの実績を上げてきた。JTがJTIに対し大きな経営方針を示して監督しつつ自由度を与えているのと同様に、「現地を一番よく知る実働部隊がスピード感を持ってビジネスを展開できる体制にしている」(寺畠氏)というわけだ。