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 2018年は、明治維新から150年目の節目であった。NHKの大河ドラマ『西郷どん』の放送をはじめ、明治維新をテーマにした旅行ツアー、イベントなどが目白押しであった。時空を超えたメモリアルイヤーが、あとわずかで終わろうとしている。今年最後に、幕末維新と関係の深い京都の企業の誕生秘話を紹介したいと思う。

 京都には京セラ、日本電産、村田製作所、オムロン、任天堂、ロームなど名だたる大企業が多数、存在する。この中で創業がもっとも古いのが任天堂である。任天堂の創業は1889(明治22)年で、もとは花札を製造していた。あとの企業は、伝統産業に起源をもつ老舗かと思いきや戦後の創設がほとんどである。

 その任天堂の創業よりも14年古い1875(明治8)年創業の老舗京都企業がある。2002年に社員の田中耕一氏がノーベル化学賞を受賞したことで一躍、注目を浴びた精密機器メーカーの島津製作所だ。

 実はこんにちの島津製作所は、明治維新時の悲しい出来事がきっかけで生まれた企業なのだ。

 ちなみに島津製作所は薩摩藩の島津家との血縁関係はない。遡れば、島津家17代当主島津義弘が、豊臣秀吉から京都に呼び出された際、井上惣兵衛という武士が懇ろに世話をしたという。惣兵衛の態度に感動した義弘が、300石のお墨付きと刀槍、そして「島津」の家名と「丸に十」の家紋を贈ったのが、島津製作所の源流である。

 島津製作所を創業したのは島津源蔵(以下、初代源蔵)という人物だった。初代源蔵は現在の堀川六条で、具足(ぐそく)の製造を専門にする仏具店に生まれた。仏具業界における具足とは、主に寺院の本堂内陣に置かれる香炉、花生け、燭台、高坏、仏飯器など鋳物でできた仏具のことである。

寺院や仏壇に置かれる具足