ニーズに応えて『ITお守り』も登場
しかし、こうした八百万の神が宿る「モノ」から、実態のない「データ」へと移行する時代を迎えている。デジタル社会の到来によって、日本人の美しき霊性が失われていくのではないか。
だが、岸川さんはあっけらかんとして答える。
「神社のスタイルは依然として古色蒼然としていますが、実際にお参りにいらっしゃる方々は若い人も多いです。今の人のニーズを受け止めるのが神社であり、お寺だと思います。紙やモノからデータに移行しつつある時代ですが、今の人の『ニーズ=願い』はなくならないどころか、ますます増えていくと思います。宗教施設はそうした人々の願いを受け止める機会をつくっていく必要があると思います」
そして岸川さんはこう続けた。
「神田明神では、デジタル時代に対応するために『ITお守り』の授与を本格的に始めたのですよ」
そのお守りの名称も、『IT情報安全守護』という。
神田明神の氏子地域(神田・日本橋・秋葉原・大手町など108町会)は、オフィス街が広がり、秋葉原の電気街も存在する。初穂料1000円を支払えば、コンピューターウイルスからの侵入や、個人情報漏洩などのリスクから守るための力を、授けてもらえるという。お守りのデザインも、黒を基調としたスタイリッシュなカードタイプだ。
人々の心の受け皿である神社や寺院のあり方も、今後、ますます変わっていきそうである。
※本稿は筆者の最新刊『ペットと葬式 日本人の供養心をさぐる』(朝日新書)から一部、コンテンツを抜粋し、再編集したものです。

「うちの子」であるペットは人間同様に極楽へ行けるのか?
そう考えると眠れなくなる人も少なくないらしい。仏教界ではペット往生を巡って侃侃諤諤の議論が続く。この問題に真っ正面から取り組んで、現代仏教の役割とその現場を克明に解き明かしていく。筆者は全国の「人間以外の供養」を調査。殺生を生業にする殺虫剤メーカーの懺悔、人の声を聞く植物の弔い、迷子郵便の墓、ロボットの葬式にいたるまで、手あつく弔う日本人って何だ!?
朝日新聞出版刊、2018年10月12日発売
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