2年前に実施した前回の名刺納め祭は、築地本願寺で実施したという。僧侶による雅楽も交え、読経も盛大に行ったが、寺院での開催はどうしても「供養色」が強く出てしまう。そこで、今年は祭場を神田明神に移した。神田明神の祭神は、縁結びの大黒天と、商売繁盛の恵比寿である。「名刺=縁結び」で商売繁盛に結びつけたい同社の理念と合致したというわけだ。
神田明神の権禰宜、岸川雅範さんは明かす。
「名刺を捨てるのは勇気がいることだと思います。今回、奉納する機会を設けましたが、所持する全ての名刺を全部、という方は少ないのでは。察するに、納める名刺の持ち主とはかなり気心の知れた関係ではないでしょうか。名刺を見なくともすぐに連絡がつくという関係……。だからと言って、その方の名刺を無下にできない。日本人には八百万の神が存在するという考えが、根付いています。特に名刺には1枚1枚にその人の名前が書かれているわけですから、魂や意識が込められているのでは、と考える人も少なくないはずです。神職である私自身、そうした意識を強く持っていて、名刺を手放せずに困っています(笑)。
そういう存在を、神社ではお焚き上げをします。例えばお守り。お守りはずっと保持しておくと汚れ、そのことで神の力が薄れてしまいます。しかし、お守りの場合は捨てられないという方が多いので、神社に奉納していただき、火で浄化させるのです。名刺も同じことだと思います。神社が名刺をお焚き上げをすることで、浄化させる。それで奉納者はスッキリする。外国人には理解できないことかもしれませんが、人と人との見えない関係性や霊性を大事にする、日本人独特の美しい行為だと感じます」
古書のお祓いも開催
他にも神田明神では、様々なモノにたいする奉納祭を実施しているという。
例えば、古書の感謝祭。神田明神の氏子でもある東京都古書籍商業共同組合の依頼によって、毎年10月の古書月間に合わせ、古書のお祓いをするというのだ。同祭典では一般者から不要になった本を持ち込んでもらう。そして、「お焚き上げ」のかわりにお祓いをした古書のチャリティーバザーを開始する。境内では古書の即売会も開催され、大いに賑わうという。
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