IT企業やベンチャー企業は、宗教行為とは一見、無縁に思える。だが、クラウド名刺管理サービスを提供するSansan株式会社は近年、主体的に供養祭を実施している。供養の対象は、「名刺」である。

 同社は名刺をスキャンしてデータ化することで、検索・管理を容易にするサービスを提供している。

 実は筆者も数年前から同社のサービスを利用している。

 かれこれ20年以上の取材活動の中で交換した数千枚もの名刺をデータ化し、同社のアプリに取り込んでいる。すると、スマホやパソコンを使って、簡単に名刺が呼び出せるのだ。電話や住所もデジタル化されるため、スマホをワンタッチ操作するだけで電話がかけられたり、名刺に記載された住所通り地図が表記されたりする便利なサービスだ。

 しかし、紙の名刺をひとたびデータ化すれば、元の名刺は不要になる。合理的に考えれば手元に残った名刺は紙くず同然である。がしかし、名刺はなかなか廃棄処分に踏み切れないアイテムのひとつだろう。捨てられないどころか、折り曲げたり、汚したりすることも憚られる不思議な存在でもある。

 社会人になった時に、新人研修で最初に教わるのが「名刺交換のマナー」だ。両手で恭しく名刺を渡す所作は、どこか宗教儀式にも通じるものを感じさせる。

 同社は20~50代の会社員、自営業者、公務員ら297人を対象に「名刺と処分に関するインターネット調査」を実施している。回答では、平均1383枚の名刺を所有しているものの、全体の92%が名刺を捨てられないとしている。名刺を捨てられない理由として、「今後の活用のため」が40%、「相手に失礼だから」が38%と拮抗している。