AIスピーカーで僧侶手配も
エンディング産業展で時代の変化を感じたのは、デジタル技術を駆使した葬式アイテムが急拡大していたこと。
たとえば遺影と言えば、これまでは黒縁額入りの顔写真が定番であった。しかし最近では、モニターを使ったデジタル遺影が登場。故人の在りし日の動画も流せるという。炎の演出として、3Dホログラムも展示されており、そのうち、3Dを使ったロウソクの炎や線香なども、供養の場で当然のように使われる時代がやってくるのではと思った。
ハイテク化は設備面だけではない。たとえば、訃報案内もスマホで行う時代である。
遺族がメールやSNSなどを利用して、訃報案内を知人に発信し、事前に出欠のリストが作成できる。また、実際の会場を訪れた参列者は、スマホをかざすだけで記帳受付ができたりする。このサービスを提供しているのはアスカネットという広島の企業だ。今後、こうした葬儀のIT化はますます拡大していくだろう。
会場でひと際、注目を集めていたのが、「お坊さんのAIスピーカー」だった。これは都内のベンチャー葬儀社よりそうが開発したもの。なんと、LINEのAIアシスタントClovaでお坊さんの法話が聞けるという。たとえば、

「ねえ、Clova、3分法話を開いて」と話しかける。すると、悲嘆に暮れている時や怒りなど、その時の気持ちに寄り添った法話がスピーカーから流れてくるという。
さらにAIスピーカーから僧侶の手配もできる。葬式や法要、戒名授与などを希望する場合、「ねえ、Clova、僧侶手配を開いて」などと話しかければ、コールセンターから電話がかかってきて、派遣僧侶の手配をしてくれる。
さすがに、実際の供養の場に現れるのは、本物のお坊さんだ。だが、そのうち、僧侶にかわって読経してくれるロボットが遺族に受け入れられる時代がやってくるかもしれない。
リアルな供養から、ヴァーチャルな供養への移行は、お墓参りの世界ではすでに実現している。
昨年、千葉県香取市の石材店良心石材が開発したのが、世界中のどこでもお墓にできるという「スマ墓(ぼ)」。

たとえば故人とゆかりのある場所――たとえば新婚旅行の地や、故郷、故人が散歩でよく訪れた公園など――を、“慰霊の場所”としてGPS登録。スマホで指定した場所に遺族が訪れ、スマホをかざすと、故人があたかもその場にいるかのごとく、動きだし、メッセージを伝えてくれるという。
まるで、スマホ向け位置情報ゲームアプリ「ポケモンGO」のお墓参り版である。スマ墓を利用する場合、生前に「動画メッセージ」を撮っておくことが必要になる。肝心の遺骨は15年間は預かってくれ、その後は合祀されるという。
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