赤字体質でもEVに活路
観致汽車
英語名はQoros Automotive。2007年、独自ブランド車大手の奇瑞汽車、イスラエルの投資グループが折半出資で立ち上げた。販売台数は15年が前年比2倍、16年が同1・7倍と急進している一方、開発投資や販売奨励金などのコスト負担が重く損益改善に苦労している。中国EV市場に参戦して挽回を狙っており、大幅な増産投資も予定。あくまで強気な経営姿勢を貫く。2016年の販売台数は2万4000台、売上高は約28億人民元。

経営テコ入れのために今春CEO(最高経営責任者)に就任しました。
劉良CEO(以下、劉):これまでは(売上高に対する)コストが高すぎました。例えば人件費。マネジメントチームのレベルとセールス担当のレベルが合っていなかった。製造コストも高い。
観致は合弁企業ですが、独立して運営している会社です。マネジメントチームは親会社からではなく全部外部から招へいしました。技術特許も奇瑞から持ち込むのではなくゼロから独自開発。半面、コストがかさんでしまった。
クルマづくりはドイツ流
観致は中国企業で初めて、欧州の安全性能試験「ユーロNCAP」で最高評価を獲得しました。独ミュンヘンにも研究開発拠点を置いていますね。中国ではドイツ車が高級車として人気が高いのですが、観致もドイツ流のクルマづくりを目指しているんでしょうか。
劉:その通りです。シャシーが比較的重い、ドイツ的な車です。だから、高速の安定性がいい。デザインも元BMW「ミニ」のデザインディレクターが担当しています。上海国際自動車ショー(上海モーターショー)で発表したEV「モデルK-EV」も、運転席側のドアがガルウィングで、助手席側がスライドドアと外開きというユニークなデザインです。
販売が伸長している一方、赤字体質から抜けきれません。
劉:テスラも今でも赤字です。とはいえ今は営業赤字を出している状態なので、経営者としてはなるべく早く損失を減らす責任がある。COOに就任後、Qoros1.0、Qoros2.0という経営ロードマップを策定しました。観致が伝統的な自動車メーカーとは全く違う存在になるための道筋です。トヨタ自動車、米ゼネラルモーターズ、独フォルクスワーゲンなどと競争するのはあまりにハードルが高い。クルマの電動化を始めとした、カーシェアや自動運転などの新しいトレンドの中で、観致はイノベーターとしての立ち位置を固めていく。
Qoros1.0は足元の経営改善のために、コストの低減、販売店の大幅な拡張、新車を毎年発売し続けることが柱です。コストの見直しについては、私が直々サプライヤーと交渉して調達価格を見直す。来年末までに製造コストを20%下げるつもりです。
Qoros2.0は(EVやPHV=プラグインハイブリッド車など)「新エネルギー車(NEV)」が戦略の軸になります。現在のラインアップはまだガソリン車のみですが、同時にEV開発にかなりの資金を投入しています。これから1年間で小型SUVとセダン、2つのEVを出す予定です。今の中国のEVは航続距離100km程度のものが大半ですが、当社の新型車は350km程度のものになる見込みです。 価格は20万元程度(約320万円)を軸に考えています。
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