「既に、ワッツアップやカカオトークといったメッセージアプリがある中で、それらに勝る機能を打ち出せていない」「カカオトークの韓国での爆発的な普及が日本やアジアにも伝播するのではないか」……。
ネイバージャパンがメッセージアプリを開発することに対して、そういった反発が社内の一部であった。
とは言え、ワッツアップもカカオトークもまだぎりぎり、日本に上陸してはいない。しかも、震災で日本全体が不安に襲われる中、親しい人とのコミュニケーションの重要さが改めて注目されていた。
「今しかない」「絶対にこのトレンドは来る。フルコミットしよう」「もしダメだったら、責任をとろう」――。福岡で震災対応のオペレーションを行う中、慎と舛田がそう腹を決める。
そして社内が落ち着きを取り戻した2011年4月、慎は最後の勝負に向け、大号令をかけるのだった。
「クローズドコミュニケーション」に的
世界で普及しているメッセージアプリのことを考えると残された時間はわずかしかない。1秒でも早く出すべきだ。
慎が掲げたターゲットは2011年6月。開発開始から、わずか1カ月半でリリースするという、開発現場にとっては地獄のような目標を達成するため、社内のエース級の開発要員のほとんどをメッセージアプリ開発に振り向ける決断をした。
開発と平行してコンセプトを担ったのは舛田。徹底して「クローズドコミュニケーション」を死守した。
舛田の頭の中では、買収したライブドアや、グループのハンゲームのIDを活用し、ツイッターやフェイスブックといったオープンなSNSに対抗した方がいいのでは、という思いもあった。
だが、それでは個性が失われる。
「電話番号という身近な人でなければ知り得ないカギを起点としたクローズドなコミュニケーションツールだからこそ、ツイッターやフェイスブックを使わない若い層や主婦のみんなにも使ってもらえるはず」
舛田がそう意を決すると、開発現場は「不夜城」状態に突入する。
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