
東日本大震災後の2011年6月、韓国のインターネット大手、ネイバー(当時はNHN)の日本法人であるネイバージャパンから、LINEというメッセージアプリがリリースされた。ネイバージャパンは後にLINEへと社名変更、今年7月中旬、日米同時上場を果たす。
韓国のネイバー本社から慎(シン)ジュンホ氏が来日し、ネイバージャパンという組織の礎を築いてから約3年。慎を中心とするメンバーは、幾多の艱難辛苦を乗り越え、LINEを生み出した。しかも、本格開発を決めてから約1カ月半で完成させるという驚異的なスケジュールで。
「LINE誕生の起点、慎ジュンホ」編の5回目(最終回)は、LINEの本格開発に着手する前夜、検索事業を捨て、メッセージアプリの開発にすべてを注いだ「決断」に焦点を当てる。(文中敬称略)
(「LINE上場、知られざるナンバー2 慎ジュンホ(1)」からお読みください)
報酬「52億円」の理由
LINEという会社はあらゆる点で規格外だ。プロダクトそのものの展開もさることながら、経営体制やその処遇も“普通”じゃない。
代表権を持ち、社長CEO(最高経営責任者)を務める出澤剛がLINEの顔であることは間違いない。出澤ら経営陣は今、7月中旬の日米同時上場を前に、ロードショー(投資家向け説明会)のため海外ツアーに出ており、上場当日は鐘を鳴らす出澤の顔が世界中で報じられるだろう。
だが、報酬を見ると出澤が突出しているわけではない。
上場に際してLINEが提出した有価証券届出書には、2015年度の報酬額が1億円を超えた役員として、出澤のほかに取締役CSMO(最高戦略・マーケティング責任者)の舛田淳と取締役CGO(最高グローバル責任者)の慎(シン)ジュンホの2人が名前を連ねている。
これによると、出澤が約1.3億円、舛田が約1億円(総額の6~7割がストックオプション)。対して慎は、約52億円と突出している(約98%がストックオプション)。
これは、慎がLINEの前身であるネイバージャパンを実質的に立ち上げた功績への「報い」なのだが、自らのクビを懸け、組織全体のリソースをLINEへと一気に集中させた、かつての決断への報いでもある。
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