今、最も企業の経営陣が恐れている存在が労働基準監督署だ。「書類送検」は当然のこととして「是正勧告」を貰うだけでも大きく報道され企業ブランドが失墜しかねない。労基署の中でも、最も注目されているのが電通事件でも捜査を担当した「過重労働撲滅特別対策班(かとく)」である。今回、かとくのリーダーである、東京労働局労働基準部の樋口雄一監督課長が日経ビジネスの独占インタビューに応じた。
(聞き手は広岡 延隆)
※日経ビジネス6月5日号では「労基署はもう見逃さない あなたが書類送検される日」と題した特集を掲載しています。あわせてお読みください。

「かとく」とはそもそも、どういう組織なのか?
電通事件で捜査を担当したこともあり、「かとく」という組織が非常に注目を集めています。そもそもどんな状況でお呼びがかかるのでしょうか。
樋口:「過重労働撲滅特別対策班」という名前の通り、まずは過重労働の対策に特化しています。あとは対象が複数の支店や事業所に渡って捜査しなければならない大規模な事案ですね。大企業ということになるんだろうと思います。(コンピューター内部のデータを収集分析する)デジタルフォレンジックのような捜査技術を持たないと対応できないような事案もそうですね。
普段、労基署に勤めておられる監督官の方々が、管内の企業を見て回っていますよね。そこから案件として上がってくるんでしょうか。
樋口:署内でやっているものを横取りすることにはならないです。一概には言えないんですが、例えばどこかの署である会社のお店を行政指導している。それを別の監督署でもやっている。その場合、それは個々の事業所の問題ではなくて、企業全体の制度などに由来しているものではないかというような目で見るわけです。
まず行政指導があるわけですけれども、「かとく」の場合はいきなり捜査や司法処分といったことになっています。そうすると、例えば以前から何度も行政受けていても直ってないとかいうところ。もう行政指導だけでは直らないのではないかといったようなところでしょうね。
なるほど。行政指導から次のステップに進むだけの悪質性があるところを、過去の指導実績などからピックアップしていくということですか。
樋口:そうなるでしょうね。一般論ですよ。少なくともそういう企業にとっては(我々が行っても)今、初めて聞きましたみたいな話ではないわけです。
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