つまり、ポジティブであることは大きなメリットをもたらすが、一方でその暴走を押しとどめる抑止力が必要なのだ。

 これについて、アメリカの心理学者で「ポジティブ心理学の父」と呼ばれるマーティン・セリグマンも同様の指摘をしている。彼の著書『オプティミストはなぜ成功するか』の中で「全員が将来の可能性ばかりを追求するオプティミストだったら、会社は破産する」「成功している企業にはオプティミストもペシミストも必要だ」と述べている。

プロジェクトリーダーの悩み

 同じ悩みにさらされているのが、企業の中でプロジェクトを任されているリーダーたちだ。

 チームの「やる気」を引き出すためには「ポジティブ・シンキング」を前面に押し出したい。同時に、計画面の"抜け漏れ"をつぶすためには、ペシミスティックな視点を持つ必要がある。これまで紹介してきた「プレモータム・シンキング」はそのための方法論だ。

 では、どうすればいいか。結局のところ、次の2点が重要になる。

 一つは、キックオフ・ミーティングなど、プロジェクトを始める際にポジティブ・シンキングとプレモータム・シンキングの両方が必要であることを明確にメンバーに伝えることだ。

 できればプレモータム・シンキングという手法を取り入れることをあらかじめ説明し納得させておくのがベストだ。

 ただ、プレモータム・シンキングの考え方を紹介するのに骨が折れるという場合もある。このときには「万全を期するために、ポジティブ面だけでなく、悲観的な見方をあえて徹底してみたい」とでも言えばいいだろう。

 とにかく、楽観と悲観、あえて両面から考えることで計画の遂行を盤石にしたいと強調するのだ。

 もう一つは、すべての局面を2つの考え方で進めることをメンバーの全員に自身の業務遂行時の義務としてもらうことだ。

 チームメンバーの一人ひとりが、自分の業務を楽観的な面で見るだけでなく、常にプレモータム・シンキングによってチェックするように強制する。こうして、プロジェクトチームの文化として、ポジティブ・シンキングとプレモータム・シンキング、両面からのチェックを確実なものにする。