人は誰しも失敗が怖い。

 準備が整わない限り、できれば動きたくない、というのが人情だ。

 「完璧主義」とか「慎重」、などと言うと聞こえがいい。だが行きすぎると、単なる「ぐず」だ。言葉は悪いが。

 中には、すべてが揃わないと動けない極端な人がいる。

 「イシバシを叩いてぶち壊す」、もしくは「イシバシを叩くことすら怖がる」人たちだ。

すべてが揃わないと動けない人は「漠とした未知の恐怖」のために一歩も進めず、多くの荷物を抱えたまま立ち止まってしまう。プレモータム・シンキングで未知なるものへの恐怖を白日の下に引きずり出す

 彼らはリスクを一切取りたくないので、何も行動を起こさない。そして絶好のチャンスをことごとく逃してしまう。

 リスクを取らないことこそが最大のリスクだということに思いが至らない。

 かつての私の部下に、こうした極端に慎重な人がいた。ここでは仮に「イシバシくん」としておこう。他部署から「融通は利かないが着実に仕事をこなす」という噂とともに異動してきた若手だった。

 ある日のこと、私は彼に仕事の指示を出した。

 「イシバシくん、あの製品の売れ行きが最近落ちているので、少し先ですが、新しい製品に切り替えることを考えています。市場に投下するための販促プランを出してください。期限は1カ月でお願いします」