パワハラ上司の暴走を止める「ある会議」

 事前に失敗の目をつみとる最新メソッド「プレモータム・シンキング」が役に立つ、と言いたいところではある。この手法は拙著『先にしくじる』でもしっかりとまとめている。

 相手に問題がある以上、自分だけがプレモータム・シンキングを実践しても、何とかなるわけではない。

 だがたった一つ、ある打開策がある。

 それが、プレモータム・シンキングの考え方を取り入れた、「プレモータム会議」を開くことだ。

 会議でなくても、ちょっとしたミーティングの場でも、プレモータム・シンキングの手法を取り入れた打ち合わせをしてみるといい。

 例えば、問題の上司を交えて議論をしなくてはならない時、プロジェクトの開始前にプレモータム会議を開くことで、障害が取り除けることがある。

 「プレモータム会議」とは、プレモータム・シンキングを前提とした会議のこと。

 この考え方をメンバー全員で共有した上で、未来の失敗をイメージしながら、プロジェクトの問題点をあらかじめあぶり出し、未来がどうなるかをチームで議論するのだ。その上で、実際のプランを綿密に練り、実行していく。

 この際のポイントは、「WYSIATI」や「NPD」的なパワハラ上司に、プレモータム・シンキングを実践させてほしいと事前に了解を得ておくこと。そこさえうまくできれば、上司の肥大したメンツを傷つけずにすむ。

 プレモータム会議は、あくまでも未来の失敗の原因をあぶり出す場である。そう伝えて、パワハラ上司が嫌がらないシチュエーションを整えることが、まずは先決なのだ。

 プレモータム会議のメリットは、物事を始める前なので、言いにくい意見も発言しやすい点にある。議論に参加する問題上司も、未来の失敗ならばと、「失敗パターン」を認めやすくなるはずだ。

 絶対に成功するための方策として、未来の失敗を考えていると説得しやすいだろう(もちろん、こう説明してもなお空気を読むことを強要する相手に対しては、手の打ちようがない。その部署にいることは、あなたにとって大きなストレスとも言えるので、早めに縁を切ることをオススメする)。

 私の場合、製品のリリース前にできる限りプレモータム会議を開くようにしている。

 この時は可能な限り意思決定者にも参加してもらう。時間が制約される場合が多い時にはプレモータム会議の簡易版を実施する。

 次のページでは、簡易版プレモータム会議の進め方を紹介しよう。

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