「俺たちのやり方なら必ず勝てる」――。いろいろなスポーツでよく聞かれる言葉だ。
もちろん、やるべきことをすべてやり切り、万全を期した上で言うなら、誰も文句は付けられない。勝つ確率は高いだろうし、仮に負けてもあきらめがつく。本当の意味でプロフェッショナルだ。
しかし、ビジネスシーンを見る限り、ここまで言い切れる人が、果たしてどれだけいるだろうか。
何かを計画したり、実行したりする時、なぜか「必ず成功する」と感じることがある。後からよくよく考えてみると根拠はまるでないのに、妙に自信を持っていたり、万能感を感じていたりする。時には運が味方をする。
しかし、たいていの場合は失敗してしまう。自信満々で始めたはいいが、必ず想定外の事態が起こる。市場の変化や思わぬライバルの出現などで、最初の自信はどこへやら。どんどん勢いを失い、最終的にはとんだ期待外れに終わるのだ。
こうした“肝心なところで勝てない”、いわゆる負け組は、「自己中心性バイアス」の罠に陥っていることが多い。ひと言で言えば、「根拠のない自信」の持ちすぎだ。
だから、どこか甘さの残る計画をつくり、いつも肝心な所でライバルに出し抜かれる。
私のビジネスマン人生などは、まさにその連続だった。そもそも私はイケイケの楽観派で、自分に甘く、根拠のない自信を持ちやすいタイプだ。それが元で数え切れないほどの失敗を繰り返してきた。
あなたも、胸に手を当てて考えてほしい。こうした根拠のない自信に浮かれ、ライバルに出し抜かれた過去の手痛い失敗がないだろうか。
「自己中心性バイアス」とは、自分がしたいことや、できることばかりを見て、周囲の状況や変化、ライバルの能力や意図を無視したり軽視したりする心理傾向のことを指す。この罠にはまると、自分の能力や準備などを過大に評価する一方、ライバルの力を過小評価したり、市場の動きを甘く見たりする。

もしあなたが、ライバルや競合他社のある分野で企画を進める時や、プロジェクトをスタートさせようとしている時に、手応えや自信を感じているようなら、一度はプレモータム・シンキングをしてみることをオススメする。どこか自分に見えないところに「自己中心性バイアス」が忍び込んでいないかを検証し、計画の中に潜む甘さを潰しておくべきだ。
もちろん、いつも成功している“勝ち組”には必要ないだろう。たいていは自然にそれができているはずだからだ。
しかし、あなたが肝心なところでいつも競り負けるタイプなら要注意だ。知らず知らずのうちに自己中心性バイアスの罠にはまって、計画には何らかの“穴”が開いている可能性がある。
では、どうすれば自己中心性バイアスの罠から逃れられるのか。次のページから方法を説明しよう。
Powered by リゾーム?