(2)執着がもたらす未来の失敗像をイメージする
次いで現在の執着を持ち続けた時に未来に待ち受ける最悪のケース、すなわち未来の失敗を思い描く。プレモータムするわけだ。
強く執着しているものが未来にもたらす最悪の失敗を想像するには、執着しているメリットの“逆”を考えればイメージしやすい。こんな具合だ。
- システムを堅牢にしたら、市場の変化に対応できなくなってしまった
- 旧来の技術を使っていたら、様々な欠陥を修正できず、安心できなくなってしまった
- 新しいツールを使った方が品質も上がり納期も早かった
- これまでに投じた自分の時間と努力、キャリアがムダになってしまった
- 旧来の技術にこだわっているうちに別の新しい技術に置き換えられ、時代遅れになった
- 旧来の技術は労力もコストも小さいと思っていたが、むしろ手間もかかるしコストも高い
ノートでもパソコンでもいい。リストにしてしげしげと眺めてみる。すると、どのような最悪の未来が、どのくらいの現実味をもって待ち受けているかがだんだんと頭に浮かんでくる。同時に、自分がとらわれている執着の正体もハッキリと見えてくる。
(3)執着を手放した時、未来の失敗像がどう変わるかを把握し、(2)と比べる
(1)(2)を通じてA氏の執着の正体は、次のようなものだと見えてきた。
- 旧来技術で安心してやりたい
- 自分の時間と努力、キャリアをムダにしたくない
ここからは、この執着を弱めてみる。このための作業が、三つ目のステップ、「フレーミング変換」だ。執着を手放した時、未来の失敗像がどう変わって見えるかを把握し、(2)でイメージした未来の失敗像と比べてみる。
実際にやってみよう。
まずは執着を手放してみる。イメージするだけだから気軽にできる。こうなるはずだ。
- 安心できるかどうか分からないが、新しい技術を使ってみる
- 今まで投じた時間と努力、キャリアは一度なかったことにする
書くと当たり前に見えるが、上記のようなステップを敢えて踏まない限り、なかなか自然とこう考えることはできない。
このようにして執着を手放した時に、どんな未来像が描けるかを見ていく。
思いもよらなかった意外なメリットが見えてくる。この場合なら、新しい技術を使ってみた時にどんなメリットがあるのか、また、今まで投じた時間と努力、キャリアにも手放してみた時の自分に何が起こるのかを想像してみる。
いまの執着を持ち続けた時のメリット・デメリットと、執着を手放した時のメリット・デメリットを見比べてみる。
すると、長年大切にしてきたものが、実はさして大きなものでなかったということに気づく。執着を手放して未来の失敗が良くなるイメージが思い描ければ、もうしめたものだ。既にあなたの執着は弱くなっている。もしかすると解き放たれているかもしれない。
プレモータム・シンキングを使えば、信じていた“ただ一つの道”以外にも、別の道があることを発見できる。この別の道が、コンコルド効果の罠からあなたを救ってくれるはずだ。
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