かつて大西洋を横断していた「コンコルド」という超音速旅客機を覚えている人は多いと思う。

 素晴らしい技術、天文学的な開発費を投じて大空に飛び立ったが、飛ぶほどに膨大な赤字を積み上げていった。莫大な投資をしたため、やめるにやめられず、結局、悲劇的な事故で多くの人命と機体が失われるのを待たなければ、この事業を終えることができなかった。

 経済学の分野で、それまでの投資や努力を惜しみ、やめるべきことをやめられないという行動や心理的傾向を「コンコルド効果」とか「埋没費用(サンクコスト)効果」などと呼ぶ。多大なリソースを投入したために、「引くに引けない」挙げ句の大失敗の典型例とされている。

 この「コンコルド効果」、規模の大小はあれど、私たちの周りに頻繁に現れる。

 大きなプロジェクトではなおさらだ。

 赤字が続いたとしても、どこかの時点で巻き返せるかもという希望はなかなか捨てられない。つぎ込んだお金や人的リソースが多くなればなるほど、引くに引けなくなる。まさに膠着状態だ。

 将来の見込みなど微塵も感じられないのに、プロジェクトの終了を誰も言い出せない。こんなシチュエーション、あなたの周りにもゴロゴロと転がっているはずだ。

 膠着状況を放置すると泥沼にはまる。最悪の場合、会社が傾く。どこかで冷静に分析して、膠着状態を解きほぐす必要がある。いま陥っている膠着状態が「コンコルド効果」なのか、それとも雌伏の時期なのか、将来の見込みはあるのか、もうほとんどないのか……。

事業や行為に対して投入した何らかのリソース(例えば投資や費やした努力の量)が時間と共に蓄積されていくと、執着が強くなり、決断を変更することが難しくなる

 こうした時こそ、プレモータム・シンキングの出番だ。次のページから説明しよう。

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