人間には、相手に対して理想的な態度や資質を期待し、満足できない場合はダメ出しをしてしまう心理傾向がある。何の根拠もなく過大な期待を抱いてしまうのだ。

 こういう非合理的な思い込みや固定概念を「イラショナル・ビリーフ」と呼ぶ。「非合理的な信念」などと訳される。

 例えば、「彼はもっと頑張るべきだ」とか「上司は責任を全うすべきだ」など、「〇〇〇べきだ」という言葉が出てくると非合理的な信念の罠にはまっている可能性がある。

 つい先頃、ベスト16まで進んだ西野ジャパン、個人的には納得できる結果を出したと思うが、グループリーグの時から敗退に至るまで、監督にも選手にも賞賛の声が挙がる一方で、実に多くの批判が浴びせられた。これらの批判の多くは世間一般の「非合理的な信念」によるものと考えていい。

 臨床心理学者のアルバート・エリスによると、人は自分に対しても他者に対して「ねばならぬ」という考え方をしがちだ。この「ねばならぬ」は特に根拠のない非合理的な信念であることが多い。

 これに基づいて考えると、とかく自分のことは棚にあげ、失敗や遅れを人のせいにしがちになる。そして、相手に過大な期待を抱くと、現実とのギャップが生じ、このギャップがストレスを生み、怒りに転じる。怒りは面と向かっての激しい言葉になったり、メールやSNSの過激な文言で表現されたりする。こうして相手との人間関係が悪化する。

相手に対して過大な期待を抱くと、現実とのギャップが生じ、それが怒りに転じて人間関係がこじれる。怒りは、その対象となる人物に直接向いたものではなく、自分の中にある根拠のない期待値と現実とのギャップが玉突き的に感情を刺激し、それが形になって現れたものだ
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