下の図を見ると、理解しやすい。決断できないまま、ずるずると時間をかけると、その分、損害の面積が大きくなっていくのだ。

なるべく決断をしないで選択肢を多く残しておきたいという傾向は誰もが持っている。そして、決断を先延ばしすることで潜在的な損害の量(ビジネスの現場では、多くは金額)がどんどん大きくなる。難しい決断ほど時間がかかる。しかし、ムダに時間をかけてしまうと、決断をしないでいる時間に比例して損害の量が増えてしまう
なるべく決断をしないで選択肢を多く残しておきたいという傾向は誰もが持っている。そして、決断を先延ばしすることで潜在的な損害の量(ビジネスの現場では、多くは金額)がどんどん大きくなる。難しい決断ほど時間がかかる。しかし、ムダに時間をかけてしまうと、決断をしないでいる時間に比例して損害の量が増えてしまう

「オプション選好性」による失敗例

 ここからは、私の優柔不断が招いた失敗の例を見てみる。以前、私が在籍していた会社で、小規模ながらも一つの課を任されていた時のことだ。

 いくつかの製品群がある中で、自分が若手の時から担当してきた製品があって、その売り上げが年々下がっていた。企画段階から手掛けた製品で、私にとっては強い愛着がある製品だった。

 いや、迷っていたというよりも、判断をしないように逃げていたという方が正しいだろう。製品の利益は年々減り、最後の方では収支トントン(悪く言えば利益ゼロ)に近かったが、それなりの売り上げ規模があり、課としてもこの商品を終了しづらかった面もある。終了するには関連部署への根回しも必要になって面倒だった。

 期の後半になる度に、ほぼ毎月のように手じまいをするかしないかで迷い、その都度、決断できる機会があった。それにも関わらず、私は決断を先延ばしにして、ずるずると販売を継続していたのだ。

 そしてある時、ついに、ツケを払う時がやってきた。期が改まった途端、競合他社から強力な新商品が出てきたのだ。当然のように、この製品の売り上げはみるみる落ちていった。遅きに失したわけだ。

 かかるコストは変わらない。赤字はどんどん増えていく。このまま行けば該当期末には恐ろしい赤字が積み上がる。大慌てした私は、期初の二カ月でドタバタとこの製品の終了を決めた。何とか赤字の拡大を食い止めたが、部署の業績には大きなダメージを残した。売り上げと利益、両方で大きなマイナスを記録してしまったのだ。

 今、振り返ってみれば、決断の半年前にゆうゆうと撤退することができた案件だった。自分が若い頃から手掛けたという愛着や、関連部署に頭を下げなければいけないプレッシャーもあって、なかなか決められず、大きな損害につなげてしまったのだ。

プレモータム・シンキングと消去法を併用

 この失敗は何も特別なものではない。こうした「オプション選好性」の罠には、誰もが陥る。あなたが経験豊富なビジネスパーソンならば、必ず思い当たる経験があるはずだ。

 では「オプション選好性」の罠に、どう対処すればいいのだろうか。言い替えれば、どうすれば、決断力のあるヒトになれるのか。

 答えは簡単だ。

 選択肢が複数あってどれにするべきか迷った時には、プレモータム・シンキングと消去法を併用すればいい。次のページでは、具体的にその方法を見ていこう。

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