どっちがいいか、決められない――。
選択肢が複数あると、もうお手上げ。どれにすればいいか、迷いに迷ってしまう。挙げ句、エイヤッと選んだ選択肢が外れくじ。こうした優柔不断による失敗、ご経験はないだろうか。
胸を張って言えることではないが、私はこの優柔不断さについては、人後に落ちない。
今回は、この優柔不断による失敗を「プレモータム・シンキング」でどのように解決していくのかを見ていく。
この方法論を知ってから、私は持ち前の優柔不断から抜け出すことができ、優柔不断でいることのリスクを確実に減らすことができた。少なくともすっぱりと割り切って前に進めるようになり、無駄な時間を減らせるようになった。
「オプション選好性」の罠
一般に、優柔不断な人間は、人間が陥りやすい7つのバイアスのうち、「オプション選好性」の罠に陥っていることが多い。
「オプション選好性」とは人間の心理的傾向で、ある選択を迫られた時、必ず選択肢を残しておきたいと望む習性のことを指す。つまり複数の選択肢があると必ずはまってしまう、避けようのない性(さが)のようなものだ。言い替えると、人は誰でも「オプション選好性」の罠にはまり、優柔不断となる。
例えば、店で買い物をする時にどれにするか、なかなか決められないとか、買うか買わないかで延々と迷う行動がそれだ。迷ううちに時間ばかりがどんどん過ぎていく。そして、ますます決められなくなる。そうこうするうちに、買わざるを得ない状況にどんどん追いやられる。そして、エイヤッと買ったものが、後でそんなに欲しいものではなかったと気づくのだ。
さっさと決めれば次の行動に移れるし、誰もイライラせずに済む。自分にとっても周りにとっても早く決断した方が、ほとんどの場合はいい方向に転ぶ。
買い物であればまだいい。迷うことも楽しみの一つと笑って済ませられる。
しかし仕事上の迷い、それも何か決断すべき時の迷いとなると、何らかの損失につながりかねない。先送りすると、その時点で見えていないリスクが高まり、大きな失敗を誘引する。稀に、何も決めなかった結果が、運良くいい方向に転ぶこともあるが、それは多くの場合、“たまたま”にすぎない。
問題は「決断しないことによる悪い影響」を無視しているか、軽視していることにある。
一般に、決めるべきことを決めない、現状を維持すると判断し、結論を先送りにする時間が延びれば延びるほど、次のような方程式が成立する。
問題が起こす影響×決断までにかかる時間=損害の量
多くの場合、これを認識できていない。そして損害の量が積み上がり、問題が顕在化し、後戻りできない状況になる。こうなってからではもはや遅い。問題が顕在化した後に対応しようとしても、リカバリーに膨大な時間と手間がかかってしまう。たいていは手遅れで悪い方向に行く。行き着く先は大失敗。まさしく悪循環だ。
次のページでは図を用いて説明しよう。
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