プレモータムは4つのステップで対処する

 プレモータム・シンキングを活用して「現在バイアス」の罠に対処するには、この4つのステップが基本となる。

  1. 目標に対して大まかなプランを立てたら、未来の失敗をリアルにイメージする。
  2. 未来の失敗に至るプロセスを時系列で丹念にたどりながら、失敗の原因や問題点を抽出する。
  3. 失敗の原因や問題点を防ぐ新しいプランを立てる。
  4. 最後に、進捗状況をチェック(レビュー)しながら確実に遂行していて成功のゴールに向かう。

 それぞれには、コツがいる。実際に、私の失敗例で見ていこう。

 まずは、この4つのステップのうちのファーストステップ、未来の失敗のイメージ。ここが最も肝心だ。このファーストステップで、どこまで詳細かつリアルに「未来の失敗」をイメージできるかが、どこかに隠れ潜んでいる問題点をあぶり出せるかどうかの分かれ道となる。

思いつくままリストアップ

 「未来の失敗」をイメージすること。これは意外に難しい。

 多くの人は、自分が近い将来失敗する姿など、想像したくはない。だからどうしてもおろそかになってしまう。ここは頑張って、無理矢理にでもイメージを浮かべてみる。あなたが新人でなければ、過去の失敗体験を総動員すれば、何とかひねり出せるはずだ。私の例なら、次のような「未来の失敗」が浮かんでくる。

  • 資料の完成度が低いことを実感して慌てる
  • 言葉がすらすら出てこない
  • 自分の言い回しに説得力がないと自分でも思う
  • 会議のメンバーが興味を失って、ヒソヒソ話を始める
  • 苦虫をかみつぶしたような上司の顔
  • 強面の役員から叱責される
  • 頭が真っ白になり、自分でも何を話しているのか分からなくなる

 こうして頭の中に浮かんできた失敗や失態を、思いつくままノートに書き留めていく。これがいわば、「未来のしくじり」の“ラフスケッチ”になる。

 そしてこのラフスケッチを基に、さらにイメージを膨らませてリアリティーを持たせて仕上げていく。

「時系列に沿って」「感情を込めて」イメージ

 未来の失敗にリアリティーを持たせる時のポイントは、「時系列に沿って」考えることだ。「いつ」「どこで」を意識しながら、感情を込めて想像の翼を広げていく。

■「未来の失敗」にリアリティー持たせるための3つのポイント
  ①時系列に沿って考える
  ②「いつ」「どこで」を手がかりにする
  ③「独白スタイル」を交え「感情を込める」

 感情を込めやすくするために、「独白スタイル」を交える。まだ起こっていない未来の失敗が、生き生きと臨場感を持って頭に浮かんでくるはずだ。

「プレモータム」という方法論をまとめた『先にしくじる

 私の実例なら、次のようになる。

 【前日に家で】

「明日は会議だ。色々と準備をしなくちゃいけなかったけれど、仕事に追われて後手に回ってしまった。資料も結局、今までかかってしまった。これだと見直しできるか、ギリギリだ。何とか完成させないと」

 「あれっ、ここの部分、データが足りない。これがないと説得力がない。調べていると朝までかかる。睡眠不足のまま登壇したくない……。どうしてもっと早く調べておかなかったんだろう。仕方ない。ここは多少説得力がなくなるが、話をうまくつないでやり過ごそう」

 「もう深夜1時を回ってしまった。不安だけれど、そろそろ終わりにするか。徹夜でプレゼンに挑んでもうまくできない。明日のために3時間だけ寝ておこう」

 【当日、会議の場で】

あなたは寝不足のまま会議の日を迎える。少し緊張して会議室に入る。 想像していたよりもずっと広い。参加者も多い。一気に緊張が高まり、体も表情もこわばってくる。

 「やばい。思っていたよりずっと重要な会議じゃないか。役員も全員そろっている。社長も来ている。関連部署の取締役もいる。数人が出るだけだと思っていたのに。この事業について知らない人ばかりならともかく、あの人たちにはロジックの穴は丸分かりだ。いつも突っ込みを入れるあの人もいる。質問が飛んできたら、どうすればいい」

 「せめて想定問答くらい考えておくべきだった……。どうしよう......」

 ここで、未来の失敗の想像から現実に戻る。ほっとするはずだ。背中には嫌な汗がにじんでいるかもしれない。

 今ならまだ間に合う。イメージした悲惨な失敗をしたくないと、切に思うはずだ。先延ばしすることが、あなたにとってどれくらいのダメージになるのか分かる。そしてこうなれば、問題解決に取り組む動機が強くなる。

 もしあなたが楽観的なタイプで、「失敗のイメージなど思い浮かばない」「後ろ向きなことなんて考えたくない」という場合は、他人の「失敗している姿」を思い浮かべるといい。傍目八目(おかめはちもく)という言葉があるように、本人の視線よりも、傍観者の視線の方が、客観的に先まで見通すことができる。

 この例なら、あなたの上司の立場に立ってみる。上司の目で部下の失敗を思い描くと、より客観的になれるからだ。部下が失敗した時に監督責任を問われるのは上司だし、その後始末をするのも多くの場合、上司だ。

 こうして、未来の失敗がリアルにイメージできたら、次の ②失敗の原因や問題点を抽出するステップに進む。それが「未来の失敗」を未然に防ぐための対策につながる。(明日の公開記事に続く)