③対策と新しい実行プランの立案

未来の失敗の原因や問題点が抽出できたら、それを防ぐ対策と新しい実行プランを立てる。

 具体的には、②のステップで設定した2つの中間地点で、失敗につながる要因を取り除く。つまり、そうならないよう、逆の行動を考えればいい。2つの中間地点にマイルストーンを設定して、確実にクリアするように計画を立案するのだ。

 単にマイルストーンを定めただけでは、掛け声倒れになる懸念がある。そこで、計画は実現しやすいものにしていく。

 1つ目のマイルストーンを少し実現しやすいものにする。最初のハードルが低ければ、心理的にも取りかかりやすくなる。マイルストーンを設定するということは、中間地点に何らかの締め切りを設定すること。期限が近い課題ほど、達成したくなる双曲割引を逆手に取って利用するわけだ。

 2つのマイルストーンは、次のようなものになる。

【中間地点1=半月前】

 資料を7割、作り終わる。その上で見直し、過不足を洗い出したら、1週間前までに何をするか決める。

【中間地点2=1週間前】

 半月前(中間地点①)に洗い出した過不足を修正し、プレゼン資料と説明の文言を完成させる。同僚や上司に模擬プレゼンをして、スピーチ部分を洗練させると共に、気が付いていない問題点を洗い出す。

 達成しやすいよう、最初のマイルストーンは比較的やさしいものにしている。ただ、達成しやすさだけを考えてマイルストーンを決めると、結局、最終目標にまでたどりつけない。無理しすぎず、簡単すぎず、という目標設定が重要になる。

 マイルストーンは、ゴールに至るまでの中間目標でしかないので、この2つに加えて、 最終目標、つまり成功のゴールも設定しておく。

 今回の場合、成功のゴールは「会議前日にすべての準備が終わる」ということ。実現すべき最低ラインは、会議前日までに資料が完成していて、スピーチの練習が終わり、 上司の承認を得ている、といったところだろうか。

 質をどこまで高めるかは、目指す成功のゴールによって変わってくる。マイルストーンと同様に目指すゴールは簡単すぎるのは問題外としても、厳しすぎてもいけない。実現可能なギリギリのラインを目指したい。

④新プランにコミットして、レビューしながら遂行する

 ③ステップまで実践すれば、未来の失敗を未然に防ぐための新しいプランはほぼ完成する。後はこのプランを「何が何でも実現する」ことを自分自身に約束する。誰かほかの人、例えば同僚や上司、あるいは部署全体に伝えて退路を断つとなおいい。

 米イエール大学のイアン・エアーズ教授は、著書『ヤル気の科学』の中でコミットの効果について次のように説明している。

 「インセンティブ効果はアメより鞭のほうが大きいことがある」
「インセンティブに対する人の反応は、予想外で奇妙なこともある。それは人が『人にどう思われるか』に大きく影響されるから。これはコミットメントを考えるうえでとても重要だ」

 鞭の方がたやすくイメージでき、あなたを動かす力が強い。上司や部署全体を巻き込んで公式なイベントにすれば、あなたはもう引っ込みがつかなくなり、しくじった時のダメージは手痛い鞭となるはずだ。

 ここまでくれば、後は2つの中間地点に設定したマイルストーンに対して、実際の進捗度をその都度判断しながら、一つずつ実現するよう行動していく。

 それぞれのマイルストーンに遅れが発生したり、不備が明らかになったりすれば、それを修正して最終目標に到達できるよう、どの時点で何を頑張ればいいのかが分かる。プレモータム・シンキングを実践したあなたならば、もう明確に分かるはずだ。

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