5月半ばから連日、テレビや新聞をにぎわせてきた日本大学アメリカンフットボール部(以下、日大アメフト部)の失態。今回は、これをケーススタディに、プレモータム・シンキングについて解説しよう。
プレモータム・シンキングというのは、前回(「極限状態のプロが使う“失敗ゼロ”の仕事術」)紹介したように、極限状態で、第一線のプロフェッショナルたちが活用する思考法だ。
何か事業やプロジェクトなど、事を起こす時、最初にその失敗をリアルにイメージするところから始める。どうしてそうなるのか、未来に起こるかもしれない失敗の原因を突きつめる。そして、失敗の原因をあらかじめ潰すように対策を立てて成功に導く。もしくは被害を最小限に抑える。
今回の事例では、一連の経緯を見る限り、炎上そのものを止めることは難しかったと思う。しかし内田正人前監督と、井上奨前コーチの周辺にプレモータム・シンキングを知る人がいたら、もう少しましな状況にできたのではないか、と考えている。
内田前監督と井上前コーチは緊急会見に臨むに当たって、「損失回避バイアス」という心理状態に陥っていたように見えるからだ。
もし、プレモータム・シンキングを活用してこの心理状態から抜け出すことができていれば、少なくとも会見の流れや2人の発言は違ったものになり得たはずだ。
この「損失回避バイアス」は、2002年にノーベル経済学賞を受賞した行動経済学の大家、米プリンストン大学名誉教授のダニエル・カーネマン氏が唱えたプロスペクト理論の中で述べられているものだ。
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