絶対に失敗できないプロが使う「プレモータム」

 「ポストモータム」が患者の死亡後に死因を特定して次の医療を改善するのに対して、「プレモータム」は患者を死に至らしめないために、死亡する前に対処法を検討する方法だ。

 

 医学界から発生したこの思考術が現在、米国では軍隊や病院、消防など、「絶対に失敗が許されない」現場で使われる。医療の現場でも戦場でも一つの判断ミスが命取りになる。

 

 ちょっとしたミスが、医療現場なら患者の、軍隊なら兵の命を危険にさらす。絶対に失敗が許されない極限環境。そこで活用されている思考術がプレモータムなのだ。

 極限状態で第一線のプロフェッショナルたちが活用するメソッドは、今ではビジネスの現場に広がっている。事業やプロジェクトを進める時、最初に失敗をリアルにイメージするところから始める。

 

 そして、どうしてそうなるのかを原因を突きつめる。その原因をあらかじめ潰すように対策を施すことで、成功に導くというわけだ。

 一読しただけでは「失敗を最初からイメージするなんて非常識だ」「ネガティブなことばかり考えていると悪い方向に向かってしまう」と思われるかもしれない。

 

 だが、あえて、「先にしくじること」をイメージすることで、将来に顕在化してくる問題点を潰す。米国ではビジネスの現場でも、「絶対に失敗できない」プロジェクトを進める際に行うリスク管理の方法として、高い評価を得ている。

 この方法論は、実は目新しいものではない。あなたの周りにいる成功者やできる人たちをよく観察してほしい。ひと握りの“天才”たちは別かもしれない。だが、ほとんどの“秀才”たちは、どんなに前向きに物事を進めているようでも、失敗への備えを周到に用意している。

 失敗の可能性を未然に防ぐプランを立て、事業やプロジェクトを進めているのだ。個人の仕事もそうだ。こうした人たちは、小さなミスやムダがほぼない。手戻りが少なく、極めて効率よく日々の仕事を処理している。生産性の高い人たちだ。

 そんな成功者たちの間で暗黙知となっている方法論を、誰でもできる形にしたものがプレモータムだ。

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