液晶もまだまだ進化の余地はあります
4月中旬、JDIの茂原工場の会議室では20人を超える技術者が集まり、週に一度の定期的な定例会議が開催されていた。
「顧客からはこんな要望があった」「もっとこんなこともできないか」
石川県の工場や、海老名にある研究開発拠点ともテレビ電話でつながりながら、開発中の液晶パネルに関する議論が白熱して交わされていた。技術本部が中心となって、事業企画や製造、次世代研究部門などの担当者が集まる定例会議だ。
議論のテーマは、液晶の新たなイノベーション。「液晶もまだまだ進化の余地はあります」。技術本部の山口英将シニアゼネラルマネージャーはこう述べる。
VR(仮想現実)での実用化を見据えた超高解像度の液晶パネル、スマホ向けに自由な形状に加工できる液晶パネル、15インチのLTPS液晶パネル…。茂原工場や研究所には、こうした過程で生み出された液晶の進化の「タネ」がまだたくさん眠っている。
「中国勢が台頭しているからこそ、新たなイノベーションのタネを仕込み、スピード感をもって市場に出していく必要がある。技術で先行しなければ生き残れないことは承知している」。JDIの本間充会長もこう語気を強める。
もちろん、JDIは有機ELの台頭を無視しているわけではない。
事実、茂原工場には有機ELの試験ラインを導入する予定だ。2017年春の稼働開始に向け、現在急ピッチで開発を進めている。「国内に有機ELの開発者は少ないので、外部からもエンジニアを集めている」。OLED開発プロジェクト室の鈴木雅彦・副センター長はこう明かす。
5月には、有機EL関連で、半導体エネルギー研究所と技術開発契約を締結。「当面はLTPSを駆動回路の技術として採用するが、将来の選択肢を広げるために酸化物半導体技術を採用した有機ELパネルの開発も同時並行で進めていく」(鈴木副センター長)。酸化物半導体は一般的に、IGZOとして知られる。
だが、会社全体の方針として液晶重視であることは変わらない。「パネルメーカーとして顧客からの要望があれば、製品群の一つとして有機ELをそろえるのは当たり前」(有賀社長)。当初の投資も500億円にとどまり、「小さく投資して市場の様子を見る」(本間会長)とのことだ。
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