日本、韓国、台湾が先行してきたディスプレーの分野で、中国企業の存在感が増している。製造業の高度化を目指す政府の支援を受け、最大手の京東方科技集団(BOE)や天馬微電子、家電大手TCL集団傘下の華星光電技術(CSOT)などがいずれも数千億円を超える巨費を投じ、覇権を握ろうとしている。韓国勢が先行する有機ELディスプレーでも各社が量産に向けて動き出している。
シャープが台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業の傘下に入ります。中国のディスプレー業界は、両社の提携をどのように見ていますか。
梁:両社の協力関係には長い歴史があります。今回の買収は突然降って湧いた話ではありません。シャープの第10世代のラインには、(鴻海董事長の)テリー・ゴウ氏が出資しています。ゴウ氏は鴻海の生産能力と日本の技術を組み合わせたいと考えています。

1952年北京生まれ。北京化工大学、中国社会科学院研究生院卒。京東方科技集団(BOE)副董事長や北京旭硝子電子玻璃会長などを歴任。現在は中国光学光電子行業協会液晶分会秘書長のほか中国電子視像行業協会副会長、中国硅酸塩学会電子玻璃分会理事長を務める。
世界最大のEMS企業としてスマートフォンの基幹部品であるディスプレーには関心を持っていたのでしょう。シャープはディスプレー関連の技術に強みを持っています。中でもIGZOは特に強い。こうした技術を手に入れられるのも、まさにゴウ氏が言うように、両社が提携するメリットでしょう。ただ現実的な問題として、100年の歴史を持つ日本の企業であるシャープと台湾の鴻海とでは企業文化が異なります。今後、メリットを発揮できるかどうかです。
中国のパネルメーカーにも影響はありますか。
梁:中国のパネル業界にも影響を与える大きな出来事だと思います。この10年で中国のパネルメーカーは急速に発展してきました。その結果、日本や韓国、台湾のメーカーは、技術革新で競争する必要が出てきました。中国のメーカーは、これまでの成長で一定の規模を得てはいるものの、新たな競争局面では新しい技術や応用分野を開発し、主要メーカーとの差をさらに縮めていかなければなりません。
中国では、パネルメーカーは競うように巨額の設備投資をしています。過剰投資ではないかという意見もあります。
梁:我々もその点には関心を持っています。ディスプレー産業は中国の電子情報産業の基礎、中核であり、非常に重要な役割を担っています。パネル投資は地方経済を牽引する役割も大きい。この10年、ディスプレー産業は政策的な指導や、政府の手厚い支持によって発展してきました。中国は既に一定の生産能力を持っています。
昨年からの世界的な景気減速で、スマホを含む従来型の端末の需要拡大が予測に届かず、需要と生産のギャップが生まれたことで構造的な生産過剰が目立ち始めました。全面的な生産過剰になるリスクもあるでしょうが、現時点で過剰投資と結論づけるのは時期尚早です。何のコントロールもせずに投資し、生産能力の拡大を続ければ過剰になるのは間違いない。そういう意味でも盲目的な規模拡大をコントロールすることが必要でしょう。
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