装置1台当たりの価格も非常に高いため、売上高の波も非常に大きく、赤字続きの事業でした。2004年に一部の電子機器に有機ELディスプレーが搭載され、期待が高まりましたが、大きな需要は生まれませんでした。それから10年以上。苦労が長かった分、ようやく報われたという安心感よりは、次の市況変化に対する警戒心の方が今は勝っています。

キヤノントッキの製造装置。有機ELパネルメーカーが買いたくても買えない状態が続く

強みはどこにありますか。

津上:小さい技術の積み重ねです。例えば、発光材料を気化させた際に、発光材料の粒子がパネルまで飛ぶスピードを安定させます。パネルを搬送する速度を一定にするなど、ファクトリーオートメーション(FA)システムを手がけてきた強みが生かせています。

 技術競争は厳しいですが、ディスプレーの高精細化に関しては先頭を走っているという自負があります。蒸着の精度もマイクロメートル単位です。さらに技術を磨き続けたいです。

積極採用を進めるが、足りていない

本社工場は大忙しかと思っていましたが、駐車場を見ると思ったよりクルマの数が少ないですね。

津上:当社の技術者は海外の顧客メーカーの工場へ装置の設置やメンテナンスに出払っていて、本社は比較的静かな状態となっています。社員数は360人程度ですが、協力会社と合わせて100人や200人では足らない規模の人員が出張に出ています。

 当然、人は足りていない。これまでにないペースで積極採用を進めているが、まだまだです。技術職なので簡単に人は集まらない。(記事で)キヤノントッキが採用に本気だと伝えてほしいくらいですよ(笑)。

装置の増産に動き始めました。

津上:生産能力を今年中に2倍強まで引き上げる計画です。キヤノングループに協力を支援し、人員派遣を受けています。2007年末にキヤノンと業務・資本提携をした際に、御手洗冨士夫会長から「グループの経営資源を最大限活用してほしい」と約束してもらえた効果が出ています。このほか、平塚事業所(神奈川県平塚市)でラインの増設を計画しています。