「液晶の次」と言われ続けてきた有機EL。10年近くの黎明期を乗り越え、いよいよ発展期に入った。5月30日号の特集「有機ELの破壊力」では、日中韓台のパネルメーカーや部材メーカーの最先端の動きをまとめた。
「新型iPhoneに有機ELパネルを採用する」
まさに「鶴の一声」と言えるほどのインパクトがあった。2015年秋、米アップルがパネルメーカー各社に伝えたこの一言をキッカケに、ほぼ液晶パネル一色だったディスプレー業界の潮目が大きく変わった。先行する韓国勢は投資を加速、中国勢も液晶向けの投資を続々と有機ELへ切り替えるほか、日本のジャパンディスプレイ(JDI)や鴻海傘下のシャープも2018年の立ち上げに向けて開発を急ぐ。
ただ、アップルの方針転換がなくても、遅かれ早かれパネル各社は有機ELの開発に着手せざるを得なかっただろう。実は、アップル以外にも業界の有機ELシフトを猛烈に推し進めた存在がいる。韓国のサムスンだ。

2007年から小型有機ELパネルを量産しているサムスンディスプレーは、2009年から発売する自社(サムスン電子)のスマートフォンに有機ELパネルを採用してきた。当初から「有機EL」と大々的に打ち出して液晶との違いをアピール、昨年発売した「ギャラクシーS6」では有機ELの特徴を生かし、本体の両縁を覆う曲面ディスプレーを初めて採用した。
自社で生産した有機ELパネルを、自社のスマホ向けに使用している分には、他のパネルメーカーへの影響はさほどない。実際、年間13億台のスマホ世界市場のうち、サムスンの年間販売台数は約3億台。「残り10億台はほとんどがまだ液晶。サムスンだけ勝手に自社向けに有機ELをやっていればいい」と見る向きがパネル業界の大勢だった。
しかし、この状況は昨年の秋以降徐々に変わっていく。その動きは、アップルが有機ELパネルの採用が打ち出す前から起き始めていた。
転機の1つは、サムスンが有機ELパネルを外販することに成功したことだ。
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