その戦略は今のところ奏功している。有料会員がグローバルで伸びていることで、ネットフリックスの時価総額は1500億ドル近くまで増加した。「相対的に見れば社債は極めて安全」とヘイスティングが言うように、会員の増加に伴う高株価が旺盛な社債需要の背景にある。言い換えれば、会員増が続いている限り、負債によるコンテンツ投資は正当化される。

 アマゾンはHBO、ディズニー、アップルなどライバルとの競争が激化する前に、ネットフリックスは高品質なコンテンツの物量を武器に、グローバルな映像コンテンツプラットフォームとしてのデファクトを固めようとしている。利益の大半をつぎ込んでeコマースのプラットフォームを構築したアマゾンと同じだ。そうなれば、ディズニーも自社コンテンツを出さざるを得ないかもしれない。

 もっとも、「会員の伸びが止まれば違うストーリーになる」とヘイスティングが認めるように、会員数の伸びが不安視されればすべては逆回転を始める。ネットフリックスはデータを活用することでコンテンツの打率を上げると同時に、グローバル化を進めることでコンテンツ1本あたりのROIを高めようとしている。だが、映画やドラマで当て続けるのは神の領域に近い。

 デファクトが先か、会員の伸び鈍化が先か――。ネットフリックスは世界を股にかけたチキンレースを演じている。

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