もう一つの大ヒットシリーズ「ストレンジャー・シングス」は見方によってはホラーであり、サイエンスフィクションであり、青春物語であり、異なるジャンルが混じり合った複雑な作品である。通常の構想段階では評価の分かれそうな作品だが、そういった3つの要素を好む視聴者が可視化されていたためすんなりとゴーサインが出た。

ストレンジャー・シングス

 さらに、ある女子高生の自殺の理由を描いた「13の理由」、さらにティーンエイジャーの光と影を描いた「リバーデール」のような作品を作ったのは、中高生の「ヤングアダルト」向けのジャンルが手薄だというデータの声がきっかけだった。

13の理由

 最近、日本のアニメに注力しているのも、単にアニメを世界に発信するだけでなく、アニメは見たことはなくてもダークなSF好きのユーザーに、「A.I.C.O -Incarnation-」のようなSFアニメを薦めれば刺さる可能性があると分かっているからだ。

A.I.C.O

 あくまでもクリエイターの創造力が主でデータは従。だが、作るかどうかの判断やオポチュニティの発見ではデータが主。「50:50」の意味するところはそれだ。

 コンテンツの作り方だけでなく、コンテンツに対する考え方も既存のテレビ局とは異なる。

 従来のテレビ局や制作会社は番組を作る時に、「金曜夜9時」など時間帯の視聴率を前提に考える。その1時間なり30分という瞬間に視聴者を引きつけるにはどうすればいいのかという発想だ。一方のネットフリックスは24時間いつでもコンテンツへのアクセスが可能なため、作ろうとしている作品に合致するユーザーがグローバルにどれだけいるか、という切り口で見る。時間と空間の制限がない。

 既存のテレビシリーズの続編を作るのもそれが一因だ。ネットフリックスは他のテレビ局が見送った続編の権利を買うことがしばしばある。既存のテレビ局と時間軸や評価軸が異なるため、続編をあきらめるような視聴率でもネットフリックスにはオポチュニティになるのだ。「フジテレビの『あいのり』は典型的な事例。彼らには効率的な番組ではなくても、われわれはグローバルで気に入るであろうユーザーを見つけ出すことができる」(CPOのピーターズ)。

 ゆえに、見るべき指標も自ずと変わる。