この数年でグローバル展開を加速している米ネットフリックス。DVDレンタルからストリーミング配信に舵を切った2007年以降、米国内のユーザー増が成長を牽引してきたが、米国内と米国外で会員数は既に逆転、海外ユーザーが成長のドライバーになっている。
Part1で述べたように、ネットフリックスのグローバル対応を支えたのは配信技術やコンテンツのローカル化、パーソナライゼーションへの飽くなき追求だ。通信環境がプアであっても、母国語のコンテンツではなくても、ストレスのない視聴環境を実現しているからこそ、世界中でファンを獲得しているのだ。

もっとも、グローバル対応の両輪の一つがテクノロジーだとすれば、もう一つの車輪はコンテンツそのものだ。エンジニアが集まるシリコンバレーのロスガトスだけでなくハリウッドにも本社機能を持つように、同社の強みは質の高いコンテンツづくりにある。
ネットフリックスは独自作品をどのように作っているのか。作品制作のフローをどのように変えているのか――。その内側を覗く。
(ニューヨーク支局 篠原匡、長野光 =敬称略)
アートとサイエンスの華麗なる融合
イギリスの女王、エリザベス2世の治世を描いた「ザ・クラウン」はゴールデングローブ賞のテレビドラマ部門で作品賞と女優賞を受賞した。アカデミー賞の短編ドキュメンタリー賞を受賞した「ホワイト・ヘルメット―シリアの民間防衛隊―」や長編ドキュメンタリー賞を受賞した「イカロス」など硬派なドキュメンタリーも作っている。
それ以外にも、「ストレンジャー・シングス」や「オルタード・カーボン」など高い人気を誇る作品を数多く抱えている。2017年には60億ドルを投じて1000時間分のコンテンツをリリースした。2018年のコンテンツ予算は80億ドルと33%増だ。制作費は並みのケーブル局よりもはるかに多い。
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